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「百瀬みどり子さん……君のお祖母さんだった」
「おばあちゃん!?」
伊織は目を剥いた。
しかし、確かに文学少女の面影が倉庫にも家にもあった。様々な、伊織の知らない作家の本を、古くて染みの出来た本を、大切そうに保管していた。
「それで? 藤村くんひょっとしてその……みどり子さんに」
花袋に促され、藤村は首を振る。
「いや、恋では……なかった。でも、恐ろしく近い感情だったとは思う。
それでもどちらかというと、見守りたい、そんな感じで」
そして彼は、見守り続けていたのだという。不平等なきっかけは、伊織の祖母の、普通の少女に与えられたのだ。
「それで、お孫さんの君が危なくなって、考える暇もなく君をここへ連れてきた。
伊織さんが死んでいるのか生きているのかは知らない。
ただ、死なせたくなかった。みどり子さんが悲しむから」
藤村は淡々と、しかし目を伏せて告白する。
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