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「ここだ。島崎くん、連れてきてくれ」 「うん」  ぺこりと再度頭を下げ、伊織は藤村に背を促され歩き出した。  視線がまとわりつく。奇異なものを見る目だ。伊織は萎縮して、うつむきながら席に着いた。 「ええと、これで全員かな。それでは、」  武者が咳払いをひとつし、きりりと表情を引き締めた。 「特例会議を開催します。議長はぼく、武者小路実篤」 「補佐は俺、志賀直哉(しがなおや)だ。よろしく」  不遜に言った隣の男は、武者に資料らしき紙束を差し出す。 「ありがとう、志賀。……ええと、今日お集まり頂いたのは、S班の某人が現世より誘拐した少女、立花さんの……」  読み上げかけて、武者は顔を上げた。明るい表情を炎にかざし、語調を改めて続ける。 「みんな聞いてるよね、立花さんの処遇について、相談したいと思ってるんだ」
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