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「処遇って……具体的にはどういうことです?」  尋ねたのは、兎のぬいぐるみを抱いた可憐な少女だった。武者は頷く。 「うん、そうだね。泉さんの言う通りだ。彼女にはぼくらのことを知ったまま戻られては困る。 戻るにしても記憶の剥奪はまぬがれない。 具体的には、記憶の剥奪をする前提で現世に送還するか、それともこちらでもう死んだものとして精算工場に送ってしまうか……」 「はい」  言葉を切ったタイミングで、手を上げたのは秋声だった。 「徳田さん、どうぞ」 「ありがとうございます……今回の件は、うちの班の判断ミスが原因です。 被害者である彼女に選択権がないのはいかがなものかと」  庇うような言葉に、伊織は思わず顔を上げ秋声の横顔を見る。秋声は視線になど気がつかないかのように、武者を見据えていた。  武者は組んだ指の上に顎を載せ、少し考えるような素振りをする。 「確かにそれはそうだよね……彼女には当然、悪意も何もない」
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