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「ですが、」  声を上げた兎のぬいぐるみの美少女に、秋声が短く呼ばわる。 「泉」 「……なんだ」  澄んだ声は一転、低く唸るような声で応じる泉。その声に、伊織は泉と呼ばれるこの子供の『少女』でないことを悟る。 「手を。挙手外の発言は許されていない」  泉は小さく舌打ちした。何食わぬ顔で手を上げ直す。 「はい、泉鏡花(いずみきょうか)さん」 (泉鏡花……?)  部屋に入るなり批判してきた芥川という青年しかり、泉鏡花しかり、聞き覚えのある名前に、伊織は眉をひそめた。しかし質問を挟む暇などなく、話は進んでいく。
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