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「はい……ですが、これは異常事態です。 本当なら、当人に知らせず記憶の剥奪なり現世への送還なりが進むはずだったのではありませんか?  当人に知らせたら、当然、記憶も命も無事で帰りたいに決まっています」 「つまり島崎先生の無茶が、彼女のスムーズな進退を妨げてしまったというわけですね」  芥川が言うが、藤村はどこを見ているのかわからない目付きでまっすぐ前を向いている。  コの字型の丁度藤村の向かいに座る青年が、「え、おれ?」とふざけたように小首を傾げた。
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