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「……芥川くん」  事件の当人である藤村が感情の薄い声を上げる。 「なんでしょう、島崎先生?」 「意見を言うときは手を上げる……徳田くんの言ったのが聞こえなかったの?」 「……ふざけたことを」  芥川が噛み殺すような声で呟き、その隣の青年は怯えた様子で身をすくめた。  どこか仕草がお道化てみえる。場にそぐわない剽軽(ひょうきん)さがあった。 「はいはい、もう。喧嘩しない……泉さんも島崎さんも芥川さんもだよ。平和に行こうよ、もう」  武者が唇を尖らせ、手を叩いて注目を集める。 「じゃあ選択肢をつくろう。簡単だよ。 一、記憶の剥奪を行い現世に送還。その後の生死に関与はしない。 二、記憶の剥奪は行わず、この世界に捕らえておく。この世界のことを話されたら困るからね。 三、記憶も魂も剥奪。普通の死者と同列に扱い、精算工場にて魂もリサイクル、残った霊魂でこちらの者になり直してもらう。 ……こんな感じかな」
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