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(おばあちゃん、文学少女だったんだなあ)  古く、染みのついて茶けた本の数々を思い出し、伊織は駐車した車の表面に映り込んだ自らのセーラー服をちらりと見、文学少女の若かりし祖母の姿を思い描いた。  木製のぱたぱた開く学校の机に着いて、お下げ髪で、少しうつむいて、本を読む少女。  確かに、今の穏やかな祖母の姿にしっくりきた。いまだに、倉庫の中の本を手に取るかもしれない。庭に面した縁側で、懐かしげに開いてみることもあるかもしれない。  それって、なんだかすごく素敵だ。伊織は思わず微笑みながら、まだ通い慣れない通学路を軽い足取りで歩いていった。
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