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「……あれ?」  伊織は眉をしかめる。先程から、ぐるぐると同じところを巡っているように思えたのだ。 (おかしいな……)  首を傾げながらスマートフォンを取り出し、現在地を確認しようとして、思わず足を止める。  時刻は0時0分を示し、13月35日などという出鱈目な日付も表示されていたのだ。  怖くなって、スマートフォンの画面を消す。初春に似つかわしくない寒気が襲った。震えながら両腕をさすり、辺りを見回す。  なんの変哲もない、路地のはずだった。が、朝早くとはいえ誰の姿もなく、音が消え失せたかのように耳の痛くなる静寂が支配している。  金縛りや夢で霊と交流することはあっても、こんなおかしなことに遭遇したことはない。  目蓋の裏に、0時0分、13月35日の表示が焼きついている。 (とりあえず、おばあちゃん家に戻ろう)  震える足を叱咤して、伊織は駆け出した。
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