エピローグ

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「あー、最悪だー」 そう言って、二ノ宮秋人は一つ欠伸をした。時間はまだ明け方。あまり寝付きがいい方ではないので、これからまた寝て、一限に合わせて起きるのは絶望的だろう。 布団から抜け出し、ぐぐっと伸びをする。仕方がないので勉強をすることとし、部屋の明かりをつける。時間はまだ5時過ぎだが、特待生として無償で奨学金を受け続け、また大学に行ってもそれを維持するためには勉強はしてもし過ぎることはないだろう。 完全に覚醒するために、顔を洗いに洗面台に立つ。寮、というか秋人が通うこの学校全体が山からの湧き水を使っているため、給湯器を通していない水は6月半ばでもかなり冷たい。その水で勢いよく顔を洗い、ふわふわのタオルに顔を埋める。寮には専属のハウスキーパーがおり、毎日リネンは清潔だ。 顔を上げると、いつもの自分の顔があった。16になり、もうすでに姉と間違えられることは無くなり、我ながらイケメンの部類に入るとは自覚している。しかし今でも母親譲りの色素の薄い髪と瞳は姉とよく似ていると言われる。 この髪は目立ち過ぎるため、染めようかとも考えたのだが、苗字も変わってしまった姉との唯一の血の繋がりのようで、そのまま放置している。 ちゃんと身支度をするのは勉強の後にしよう、そう考えると秋人はボサボサのパーマ頭に、勉強の邪魔にならない程度にピンを刺して整えてまた部屋へ戻った。
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