プロローグ

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 ホテル シャルトルシャルダン。再開発著しい鍋島駅北口にそびえ立つ、最低でも一泊1万円を超える高級ホテルである。  そのホテル シャルトルシャルダンのお手洗には、全身がうつる金縁の鏡が設置されている。  鏡にうつるのは、ラベンダーピンクの薄手のニットに、薄いピンク色で光沢のあるボタニカル柄スカートを履いた女。  足元はブラウンのバレエパンプス。  女は、右目で全身鏡を確認すると、正面にある鏡を覗き込んだ。  女は、肩甲骨辺りまでの髪を茶色に染めて、その髪はゆるいウェーブを描いている。  まつ毛はカーラーで上げ、マスカラ。本来はツリ目がちだけど、アイラインでタレ目風。  チークは頬骨の少し下を中心に薄く入れているはずなのに、目元まで赤く染まっている。  リップはヌーディーカラーに、ピンクの控えめなラメグロスが塗られている。  そして、そのグロスを塗り直しに来たのだろう、チップのついたグロスのキャップを握りしめている。  鏡の中の女は、疲れた顔。  そう。その女は私だ。  本来なら、土曜日の夜は家でテレビを見ながら、ゴロゴロしているはずなのに。  私は、いったい、ここで何をしているのだろうか。
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