壁井華子の月曜日

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壁井華子の月曜日

 私、壁井華子(かべいはなこ)の一週間は月曜日朝から始まる。  最低限のメイクをやや平べったい顔に施して、間の抜けた目元は眼鏡でカモフラージュする。  肩甲骨までで揃えてある黒髪は、後ろでまとめて、今日もグレーのスーツを着用した。  玄関には170cmある身長は目立たないように、3cmヒールのパンプス。会社で5cmヒールのものと交換するのである。  毎朝見ているテレビの情報番組。星占いを確認したので消して、玄関を出た。  やぎ座は7位。良くも悪くもない。 『周りの人に振り回される予感。早めの帰宅を心がけて ラッキーアイテムは豆腐』  駅までは徒歩で5分。すぐ近くの商店街を抜けていく。この時間はまだ、どこの店も開いておらず、カラスの鳴く声とトラックの音が響いている。  会社までは二駅。通勤時間は20分くらい。  勤務先である株式会社バナーナは、市内中心部から少し離れた、静かなオフィス街に本拠地を持つ設立10年の会社。  メイン事業は、社長である完野優太が大学在学中に起業したwebサービス。今では、軌道に乗ったwebサービスの事業は専務に任せて、本人は人材派遣事業に精を出している。    私は、そんな人材派遣事業で拾われたひとりであった。
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