神は昏き深淵の中でお目覚めになられたのです。

1/1
前へ
/9ページ
次へ

神は昏き深淵の中でお目覚めになられたのです。

「は? 暗すぎるんだが?」  太陽神デミが目を覚ましたとき、そこは無の世界でした。 「懐中電灯……懐中電灯……どこやったっけ?」  無の世界だっつってんだろ!  懐中電灯は暗くても分かる場所に置きましょう。災害は昼間に来るとは限りません。可能なら夜光テープ、蓄光テープなどを貼っておくと便利です。 「まあいいや。光あれ!」  デミ様が唱えると光の玉が虚空から現れました。 「おお! 何もねえ!」  デミ様は黒い世界から白い世界に変わるのを見ました。  無の世界なので、デミ様以外に何もなく、ただ光に照らされて白い世界が広がっていたのでした。 「え、これ〇〇しないと出られない部屋とかじゃなくて?」  無の世界だっつってんだろ!! 「え、なに、きこえない」  音は媒体が無ければ伝わることがありません。しかし神の力をもってすれば、俺の宇宙では爆発音が聞こえるようになることも可能です。 「空気とかいうの作っとくか。えーと? 空気の組成?」  デミ様は異次元から取り出したマニュアルに沿って空を生み出しました。 「水素と酸素が結合したやつが35Lに、炭素が20kgで、窒素と水素が結合したやつが4L……? これ違うじゃん。何が神マニュアルだよPDF化しとけや! もういい! 窒素8割、酸素2割、あと適当に混ぜとけ」  こうして空が出来上がったのです。 「この世界、前後左右はおろか上下もないな。よし、下を作るか」  こうして大地ができあがったのです。 「はー、快適だなぁ。喉渇いたわ。水作っとくか」  こうして海ができあがったのです。大地からナトリウムなどのミネラル分が溶出してそのうちしょっぱくなるんじゃねえの? 空の作り方が雑だったせいだぞおい。 「兄者、そっちの世界は……なにこれキモ」  デミ様の弟神、ヤルダ様が異世界からやってきました。ヤルダ様の完璧な世界に比べ雑すぎるんだよバカか? 「なにこれ不毛の地じゃん」 「え、空と大地と海以外に何かいる?」 「はー……これだから……。マニュアル読めよなー」 「は? 今時紙のマニュアルとかありえねえだろ? SDGsが叫ばれてるんだぞ?」 「兄者の世界そこまで文明発展してねえだろ! 大体、その言葉の意味ちゃんと理解してんのか?」 「①貧困をなくそう! ②飢餓をゼロに! ③すべての人に健康と福祉を! ④質の高い教育をみんなに! ⑤ジェンダー平等を実現しよう! ⑥安全な水とトイレを世界中に! ⑦エネルギーをみんなに!そしてクリーンに! ⑧働きがいも!経済成長も! ⑨産業と技術革新の基盤を作ろう! ⑩人や国の不平等をなくそう! ⑪住み続けられるまちづくりを! ⑫つくる責任!つかう責任! ⑬気候変動に具体的な対策を! ⑭海の豊かさを守ろう! ⑮陸の豊かさも守ろう! ⑯平和と公正をすべての人に! ⑰パートナーシップで目標を達成しよう!」 「コピペじゃねーか!」 「は? 手打ちだが? ググっても画像ばっかでダメだ」 「そもそも人間居ないのにSDGsとか関係ないだろう」 「いやこれどう考えても人間が諸悪の根源じゃね? 作る意味ある? 我々に姿形似てて気持ち悪いし」 「チョットワカル  でも緑くらいあったほうが良くね?」 「まあ確かにな。えーと、草の生やし方wwwwww」 「この世界に居ると気が狂いそうだから帰るわ。読者もこんなの読んでたらおかしくなるからスマホ閉じろ」  こうしてヤルダ様は元の世界に帰っていったのでした。 「大地に草を生やしてっと……あれ? 枯れちゃった。なんで?」  最初から空気を作ってしまったためオゾン層がないのです。  オゾン層は太陽から降り注ぐ紫外線をカットして地上の生き物を守る働きをするのです。 「トラブルシューティングのページは……475319ページから975146ページ……は? トラブル多すぎかよ欠陥しかねえクソゲーかよ。運営へクレーム入れるページは……電話番号090-1234-5678? 電話って何? 文明の産物?」  デミ様は空と大地と海を作ってお疲れになられたので、藍藻類という製作コストの低い生き物を海に捨てて寝ることにしたのでした。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加