下心が世界を救う

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「おねぇさん、どうぞ」 「ありがとう」 声のした方に顔を向けると、 幼稚園か小学校1年ぐらいの男の子が席を譲っているのが目に入って来た。 そして、一緒にいる母親に褒められたのか、 少年は嬉しそうに照れている光景があった。 ああ、そうか。 あれでいいのだ。 きっと彼は親にそう言われていて、そういう事が好きな両親なのだろう。 そんな、母によく見られたい、好きでいて欲しいという気持ちから席を譲ったのだ。 子供は純粋で欲望に忠実だ。 真っ直ぐではあっても、聖者ではない。 だから、きっとそういう下心ありきでいいのだ。 うん。僕に置き換えるなら、 席を譲った女性と将来的に、もしかしたら何かの拍子にワンチャンが訪れることがあるかもしれん。 その時の為に出来るだけ優しくするのだ。 そう考えたらいいだけことだったのだ。 善意? 道徳? ルール? マナー? 何言ってんだ? そんなもので、目の前の人が救えるわけがない。 愛が地球を? 何言ってんだ? そんなんなら、リョーマもヨシツネも死んでねぇよ。 下心が社会を良くする。 これこそが真実だろう。 その結果、世界は昨日よりも良くなる。 そして地球を救う。 …………かも知れない。 誰かによく見られたい。 出来ることなら異性に好意を持って欲しい。 なんならすげー惚れて欲しい。 それは誰もが持っている正直な気持ちだ。 それは強者である必要も、聖者である必要もない。 僕は僕の真実の為に、善意だと呼ばれている行動をとる。 そんなんでいいのだ。 そして、次は全力の笑顔でこう言うのだ。 「どうぞお座りください、お嬢さん(奥さん)」 とね。
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