第3章

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 あの冬、わたし達はいくつもの言葉を交わし、心を重ねた。  例えば、研さんの入院先から帰る電車の中で。  例えば、区民センターの小さな会議室で。  例えば、凍える夜に、とめどなく落ちてくる雪を分けて走る車の中で。  仕事の帰り、ばったり会った駅のホームで。  二人で行った路地裏の小さな店のカウンターで。  手をつないで歩いた静かな夜の道で。  会う度にあなたは、その優しさでわたしを包み、なぐさめ、勇気づけてくれた。本当は、あなたにこそ誰かの支えが必要だったのに──。  何年もの間、あなたは何を想い、何を支えに毎日を過ごしてきたのだろう。あの頃のあなたが抱えていた痛みを思うと、涙が止まらない。
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