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「美晴ー! ごはん出来たよー!」
階下から母の声がする。
私は半身を起こした。
さっきまでとまるで違う光景だ。
陽の当たる広い部屋。ドラマのようだ。趣味のいい雑貨が飾られている。
ベッドからおりて、私は「あれ?」と思った。
「さっきまで」? なんの事だろう。
私は何をしてたっけ。
思い出せない。
とりあえず窓を開ける。入ってきた風はさわやか。白いカーテンが揺れる。絵に描いたようないい天気。
いい気分のまま廊下を出てドアを開ける。私専用の洗面所。アンティークな白い陶器のシンク。ピンクのバラが描かれている。
正面に、宮殿にありそうな金の額縁の大きな鏡。
――私、こんな可愛い顔してたっけ。
鏡の中には、小顔で目がくりっとしていて、すっと鼻筋が通って、モデルでもおかしくなさそうな子が映っていた。
長い髪をまとめようと後ろにはらう。
私は凍りついた。
首に傷がある。
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