26人が本棚に入れています
本棚に追加
「美晴ー! 帰ろう!」
クラスで1番かわいい朝倉さんが大きく手を振ってる。心底嬉しそうな顔。なぜだか動悸がした。
「うん、今行くよ」
私はなんともなさそうな顔で朝倉さんの元に駆け寄る。
他のクラスメイトが嫉妬する。
「えー朝倉さんずるーい」
「私も一緒に帰りたいー」
朝倉さんが「今日は私、美晴と2人で帰りたいの!」なんて強く言うもんだから、私は「ごめん皆、また今度ね」と軽く謝る。頭を下げた時にサラサラの髪が微かな音を立てた。
「わかった!今度楽しみにしてるね!」
「またねー」
皆がにこにこしながら去っていく。
なんだろう、この気持ち。
心がほわほわする。あったかい。気持ちいい。
「美晴と一緒に帰れるの嬉しい!」
駅までの道を朝倉さんと歩く。彼女は浮かれていて、スキップでもしそうな勢いだ。
どこか寄り道しない、と提案される。タピオカ屋さん、ドーナツ屋さん、アイス屋さんにケーキ屋さん。私が食べたい甘いもののお店ばかりずらっと並んでいる。
「迷うねーどれにしよっか?」
ケーキ屋さんを外から眺める。首の傷をまた触る。
そのウィンドウ。映りこんだ私の背後に、長い黒髪の女の子が立っていた。
日本人形みたいなその見た目。ただしうちの制服を着ている。
最初のコメントを投稿しよう!