彼女の首の傷

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「美晴ー! 帰ろう!」  クラスで1番かわいい朝倉さんが大きく手を振ってる。心底嬉しそうな顔。なぜだか動悸がした。 「うん、今行くよ」  私はなんともなさそうな顔で朝倉さんの元に駆け寄る。  他のクラスメイトが嫉妬する。 「えー朝倉さんずるーい」 「私も一緒に帰りたいー」  朝倉さんが「今日は私、美晴と2人で帰りたいの!」なんて強く言うもんだから、私は「ごめん皆、また今度ね」と軽く謝る。頭を下げた時にサラサラの髪が微かな音を立てた。 「わかった!今度楽しみにしてるね!」 「またねー」  皆がにこにこしながら去っていく。  なんだろう、この気持ち。  心がほわほわする。あったかい。気持ちいい。 「美晴と一緒に帰れるの嬉しい!」  駅までの道を朝倉さんと歩く。彼女は浮かれていて、スキップでもしそうな勢いだ。  どこか寄り道しない、と提案される。タピオカ屋さん、ドーナツ屋さん、アイス屋さんにケーキ屋さん。私が食べたい甘いもののお店ばかりずらっと並んでいる。 「迷うねーどれにしよっか?」  ケーキ屋さんを外から眺める。首の傷をまた触る。  そのウィンドウ。映りこんだ私の背後に、長い黒髪の女の子が立っていた。  日本人形みたいなその見た目。ただしうちの制服を着ている。
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