彼女の首の傷

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 誰もが私に優しい。  誰も私を傷つけない。  雑誌モデル、アイドル、天才女優と私の気まぐれでその日の仕事は変わり、ワンシーン適当にとっただけのドラマが社会現象を巻き起こす。全ていいとこ取りの世界。 「今日もテレビの収録なの?」 「うん。ごめんね」  申し訳なさそうに言うと木村君は「かわいいなぁもう!」と私を抱きしめる。そのままお姫様抱っこをして愛をささやく。 「好きだ美晴! 俺の事、彼氏でいさせてくれよ? 2番目でも3番目でもいいから」 「もちろん」  困ったなぁ、とちょっと思う。芸能界に入ったら次々と私に告白する人が増えてきて、断りきれなくてもう恋人を数えるのに両手両足の指でも足りないくらい。  まあ、私はそうなる運命なのよね。  だってこんなに魅力的で、完璧なんだもの。  その時。 「美晴、美晴!」  声が聞こえた。
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