6人が本棚に入れています
本棚に追加
***
猫好きあるある。
朝目覚めた時、腕の上がぬくぬくしてると萌え転がりそうになる。重くて腕が痺れそうになるが、それもまた一興。私の目覚めを待っているみーちゃんは今日も可愛い。本日は、私の腕の上で香箱座りという器用なことをしてくれている。
「なーう」
「おはよう、みーちゃん、重いよー。でも今日も可愛いねー」
私が可愛い、と言うとそれがわかっているのか、三角形の耳をぴこぴこと動かして反応してくれる。今日も黒い毛がツヤツヤで美しい。私は首だけ動かして、時計を見た。昨日よりも少しマシだが、それでも既に午前十時。昨日はそんなに夜更かしした覚えもないのに、と自分の寝汚さに呆れてしまう。
「みーちゃーん、動けないよー。ごはん食べたくないの?昨日、ちょっと奮発していいフード買ったでしょ。にゃおちゅーるもあるよ。そこにいられると動けないよー」
「なーうなう?」
「そ、ちゅーる」
「なう!」
通じたのか、もそもそと黒い毛玉が蠢き、ようやく私の腕の上からどいてくれた。腕が黒い毛まみれになっているのも愛おしい。愛猫に邪魔されて仕事に行けなくなる、あるいはテレワークが全く進まなくなるエピソードはよく耳にするが、今の私には非常にわかるというものである。気付けば、生活すべてが猫優先になっているなんて珍しくもなんともない。というか、命を預かるならばそれくらいの覚悟はあって然るべきだろう。
キッチンへ行き、昨日買ってきたフードの袋を取り出す。茶色くてカリカリした、一見するとクッキーのようなフードだが価格はかなりのもの。にゃおちゅーるがいくつ買えるか、といったレベルの代物だ。実際高いだけあって美味しいのか、昨日のみーちゃんはかなり食いつきが良かった。それよりもうまいうまいと言いながら食べていたのがにゃおちゅーるの方だったのは、なんとも複雑な気持ちになったのだけど。ちゅーる恐るべし。
猫用ミルクと一緒に彼女に出してやりながら、私は自分の着替えを始める。外に出かけるかどうかはわからないにしても、さすがにパジャマのまま一日過ごすわけにはいかない。なんだか酷く眠いし仕事の疲れも抜けてはいないが、せめてジャージくらいにならなければ宅急便の応対もできないだろう。
「あー……」
黄色いTシャツとジャージのズボンを履いて、さあ自分の朝ごはんをと思ったところで、私はため息をついた。どうやら私はみーちゃんのご飯のみならず、自分のご飯に関してもいろいろと忘れていたらしい。冷蔵庫には、最低限の牛乳やお茶、調味料くらいしか入っていない。辛うじてパンとご飯はあるので朝ごはんは食べられるが、お昼以降をなんとかするためには食材の買い出しに行かなければならないだろう。
昨日はみーちゃんのためだと思って出かけられたが、自分のためなら話は別だ。少し熱っぽい気もするし、何より億劫で仕方ない。
「めんどくさいー」
「なー?」
「あー、ごめんみーちゃん。みーちゃんのことはなんも面倒くさくないよ。自分のことがめんどいだけだからねー」
どうしたの?というようにキッチンを覗き込んできたみーちゃんが可愛くて仕方ない。私は彼女に微笑みかけると、欠伸をしながらパンとマーガリンを取り出したのだった。
最初のコメントを投稿しよう!