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猫好きあるある。
朝目覚めた時、腕に抱きついてきているもふもふがいると動けないのに愛おしい。今日も今日とて、みーちゃんのアピールは激しいようだ。私の指から肩まで、すっかり黒い塊で覆われてしまっている。必殺、腕に抱きついて離しませんモード。上に香箱座りされるよりロック度が高い。
「おはよう、みーちゃん」
「にー!」
「今日も愛が激しいよみーちゃん、うごけなーい」
「にー、にー、にー!」
髭をすりすり、頭をすりすり。可愛い、めっちゃ可愛い。眠気もやばいし体もだるいし身動き取れない、でもとっても幸せな気分だ。時計を見ると、時刻は既に正午になってしまっている。みーちゃんもお腹がすいているだろうに、愛情ロックを優先してこようとは。そんなに私のことが好きなのか、と思うと嬉しくなってしまう。
しばらくまったりと彼女をもふもふさせてもらった後、どうにか腕を剥させてもらってキッチンへ。そういえば、昨日は結局朝パンとヨーグルトを食べただけで、何も食べていない気がする。買い物に行くのが面倒になって、結局そのまま食べることを放棄してしまったのだ。自分もズボラになったものだ、と思いつつひとまずみーちゃんのお皿を出すことにする。猫用ミルクとペットフード、それからにゃおちゅーる。彼女も成長するにつれて食べる量がどんどん増えているので、また新しく買い足してやらねばなるまい。
――でも、外に出るのも億劫だし、というかこのペースだとさらに食事量増えそうだし。こうなったら、宅配か何かで買おうかな。ちょっとお金かかるけどいいや、今はそういうサービス利用するのもありでしょ。
「にーう?」
「はいはい、今行くからねー」
キッチンの前で、まるで巨石のごとく待ち伏せするみーちゃん。まったく、ついこの間まで子猫だったのに大きくなったものだ。私の腰あたりにある彼女の頭を撫でて、私は皿をリビングに持っていく。みーちゃんがガツガツとフードを食べ始めた時、りろりろり、と寝室でスマホが鳴り始めた。大好きなドラマの主題歌、これが流れる時はメールでもLANEでもなく着信である。私は寝室に戻ると、枕元で充電しっぱなしのスマホを手に取って眉を顰めた。電話してきたのは、会社の同僚の聡美である。
「あー、もしもし聡美?どうしたの」
緩慢な動作で着信ボタンを押して言えば、向こうからは“どうしたの、じゃないよ!”と甲高い声が響いてきた。
『やっと繋がったよ電話!どうしたの咲江、何かあったの!?』
「へ?何かあったって?」
『いやだから、今日月曜日だってば。いつも真面目な咲江が無断欠勤したって、みんな凄く心配してたんだからね!?家で倒れてるかもしれないって本気で思ったよ、何回電話かけても出ないんだもん!!』
「あー……」
そういえば、と私はカレンダーを見て思い出した。今日は月曜日、普通に出勤日だ。ついつい忘れて、昼まで眠ってしまっていた。
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