神様はいませんでした

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 うちから遠く電車でぶらりぶらりと揺られた先には、ずっと前に私が住んでいた家があるんです。小学生のころに私が引っ越してきたんは、あんたも知っていることでしょう。転校してきたばっかでクラスに馴染めない私を気遣ってくれたんは、他でもないあんただけだったんでした。私は、あんたを救うために一度地元へ戻ろうと思うんです。 「本気で祈れば、いざというときは神様も助けてくれるんよ」  母がいつも手を合わせている仏壇には、神様の一部が宿っているそうなんです。そして、その神様の本体が、古いそのまちの神社に住んでいるらしい。だから私は、あんたを救うためにちょっとその神社に行って、本気でお祈りしてこようと思うんよ。本気で語りかければ返事をしてくれるかもしれんから。とにかく私は、その神様が待つ神社へ足を運ぶつもりでした。私を待つ神様がどんなやつかは知らんけんど、もし姿を現したんなら、ちゃんと働けと尻を叩いてやるつもりです。
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