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「···えー、お待ちください」
江藤さんは写真集を手に取り、くるりと後ろを向いた。そして、ページを捲ったり、奥付を確認したりし始めた。
この写真集を査定したのは私だった。
江藤さんはレジでお客さんの対応をしていたので、怖そうな男が買取カウンターに写真集を乱暴に置いてきても、私が対応するしかなかった。
写真集の状態は一見良かったが、上側面を見ると少し焼けていて、背表紙もやや色褪せていた。天井のない本棚に立てかけられていたのかもしれない。
帯もあったが、背表紙と同じ状態で色褪せていた。
また、この写真集は10年以上も前のものだ。
特に、特典として握手券が付いていたのでファンが大量に買い占めたこともあり、市場に多く出回っている。
どの古本屋にも必ず棚に刺さっているし、バックヤードには更に在庫があるのではないか。
この古本屋にも、もちろん在庫は数冊あった。
私は江藤さんのもとに近づき、不安げに彼の表情を伺った。
江藤さんは私の顔を見て、固い表情のまま、
「うん、たしかにこれは190円だね」
と小さく呟いた。
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