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「···私が、その本を、800円で買うので、お引き取りねがえますか?」
私はポケットからごそごそと三つ折財布を取り出した。
瞬間的に湧き上がった怒りは、男に目を向けられた瞬間あっという間に萎んでしまった。
だけど、必死に助けようとしてくれた江藤さんを助けたかった。
「お、ねえちゃんが買ってくれるんか」
「い、いや!僕が買いますので、この子からはお金を取らないでください」
「取るんやなくて、ねえちゃんに売るんよ」
「いや、だから、僕が買いますから!!石田さん、ここはいいから」
ね、と言うように江藤さんが私の両肩に手を置いた。
「どっちでもいいけん、はよ買ってくれんかね」
「おい!」
声の方を見ると、中年の男性がスマホの画面を私たちに向けていた。
まるで水戸黄門様の印籠のようだ。
「今、警察と電話が繋がっている。さっき写真も撮った」
「あぁっ!?」
男は大きく目を見開き、写真集を乱暴に取って、店の外へと走り出した。
その様子を、私も江藤さんもただただ呆然と見ていた。
「君たち、大丈夫!?」
助けてくれた男性が、私たちに声をかけた。
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