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「学費のためなんだったら、いっそあの城を売りなよ。」
少し笑って勇者は後ろを行く魔王に振る。
「あの城は俺の爺さんのだからダメ。」
魔王も少し笑いながらそう返す。
「…ははっ…」
勇者の少し気の抜けた笑いのあと、ふたりは並んで歩き出した。
「俺、シェフに習っていたから一通りの料理はできる。じゃあ決まったらよろしく。…あ、それと学校の保証人のサイン、あんたにもらうことにしたから。」
また突然の魔王からの頼み。
勇者は立ち止まり、心底驚いて叫んだ。
「だからなんで俺なんだよ!?」
すると魔王は何でもないことのように返した。
「部下はもう出払って誰もいないし、親父もお袋も、もう何年も旅に出てる。頼めるのは顔を見知ったあんただけだ。あ、してもらうサインは『身元引受人』ってことで。」
「だ〜か〜ら、おかしいだろ、それ!!」
森には、少々嬉しそうな勇者と、呑気な魔王の声がしばらく響き渡っていたという。
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