アラーナはもう帰れない。

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 地球の環境汚染が進み、自然の植物や殆ど見るれなくなってからすでに久しい。野生の魚や動物達の多くも絶滅し、今や人々が口にできる食糧は冷たい工場で大量生産された缶詰が基本となっていた。一部地下の施設で牛や豚を飼っている地域もあるものの、極めて数が少ないことから牛肉や豚肉の値段は五百年前の百倍以上に跳ね上がっているとされている。到底、庶民が手を出せるような代物ではない。 ――環境汚染は人類の自業自得って言うのかもしれないけど。……今を生きる私達が、過去でのうのうと生きてきた人たちの負の遺産を押しつけられたってのもの事実だもの。昔の人達のせいで、今の私達が美味しいご飯の一つも食べられないなんて理不尽がすぎるわ。  汚染区域が増え、人が住める場所も減りつつある今。この惑星の環境はまさに、移住先・もしくは資源の確保先として夢のような場所だと言えよう。この惑星が長期的に人類が住むに適しているなら、大規模な移住計画を進めることもできるし、そうでなくても資源の一部を持ち帰るだけで飛躍的な成果を産むのは間違いない。なんせ、地球ではもはや綺麗な自然の水や植物の種一つ、満足に手に入らない状態なのだから。  アラーナがこの宇宙飛行士になったのも、現在の地球の環境を憂いてのことだった。この惑星のことを本国に報告すれば、それだけで自分達三人は英雄の扱いに違いない。 「不思議ですね」  リリアンが計器の針と空を交互に見ながら言った。 「浮遊惑星って、動けば動くほど太陽の位置が変わるはずなのに。まるで図ったように、快適な気温を保ってます。まるで惑星そのものが意思を持って動いてるみたいに」 「へえ、貴女にしては面白いジョークじゃない。惑星まるごと一個が異星人だったら凄いわね。自分で酸素を作り出して、宇宙を自由に漂ってるってことだもの。ある意味この銀河で一番進化した生き物ってことになるわね。しかも植物まで自分の皮膚の上に生やしてるんだから」 「もう、そんなにからかわないでくださいよ!例えですよ、例え!」  ぷんぷんと怒って見せるリリアンは、とっくに成人していると思えないほど可愛らしい。リリアンと、そこで植物のデータを取っているクリフ。この三人で、惑星探査を行うのは今回でもう八度目になる。訓練も長年一緒にこなしてきているし、もはや気心が知れた仲だった。 「すげえ」  そのクリフが、感激したように声を上げる。
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