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それは、クリフの死体を呆然と見つめていた一瞬に起きた。リリアンの手足に、しゅるしゅると周囲の木から伸びてきた蔦が絡みつき、拘束してしまったのである。しかも両手両足を、ぐいぐいと四方に強く引っ張り続けているらしい。痛い痛い、と彼女が悲鳴を上げている。
「い、嫌!痛い、痛い痛い痛い!ちぎれちゃう、ちぎれちゃう!り、リーダー、助けて!リーダー!!」
なんとかしなければ。アラーナが立ち上がろうとした時、今度はアラーナの手が何かにがしりと掴まれていた。
「ひっ!?」
地面についた、アラーナの両手を拘束していたのは、リリアンの手に絡みついていたのと同じ蔦である。
「は、離して!何するのよっ!」
滅茶苦茶に暴れて拘束を解こうとしている間に、リリアンはもっと酷いことになっていた。ごきり、ぐきり、という鈍い音が四回連続で響き、リリアンの両手と両足が不自然にぶらさがった。彼女の股関節と肩の関節が全て外されたのだ、と気づく。
「ぎゃあああああああああああっ!?」
しかも、地獄はそれで終わらない。蔦のうちの一本が、彼女の股間に狙いを定めたのだ。まさか、と思った次の瞬間、鋭い槍のようになったそれが、彼女の臀部に思いきり突き刺さっていた。宇宙服には、一定の衝撃を吸収するシールドがあったはずである。しかし植物は、そのシールドをあっさり突破して、柔らかな彼女の肉を引き裂きにかかったのだ。
「ひ、ひぎゅううううううっ!?お、おしりに、や、や、ひゃぎゃああああああああああああああああっ!?」
ぼこぼこと彼女の腹が波打ったと思った次の瞬間、彼女は目玉をぐるんと裏返らせ、その口元から血を吹き上げた。そして、大きく開いた口の中から、鋭く尖った枝をじゅるんと突き出させたのである。串刺し公、という言葉を思い出していた。かつてとある邦が戦争中、捕虜を串刺しにして敵前に晒すことで、戦意を奪ったという話。尻から口まで貫かれ、空中に縫いとめられ。びくびくと虫の息で痙攣するリリアンの姿は、まさにその串刺しにされた哀れな生贄を彷彿とさせるものだった。
――な、なんで!?何でこんなことになってるの?ここは、理想的な惑星じゃなかったの?ねえ、なんで!?
ごそり、と尻の下で地面が蠢いたような気がした。アラーナはここでようやく、自分もまた座り込んだまま身動きが取れない状態であったことを思い出す。
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