アラーナはもう帰れない。

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アラーナはもう帰れない。

 その星に降り立った瞬間、仲間達から上がったのは歓声だった。何故なら自分達を待っていたのは、想像していたよりも遥かに理想的な光景であったのだから。 「凄い……!」  宇宙飛行士であり、チームリーダーであったアラーナもまた、驚かされた一人である。ボタン一つでバリアを貼り、酸素供給をも可能にする現在の宇宙服は極めて軽く、動きやすい。大型なヘルメットさえ不要だ。だが、快適に感じるのはそれだけではないだろう。重力が、地球とさほど変わらないこと。気温が母国の春先のようにポカポカと温かいこと。そして何より、周囲が豊かな緑の林に覆われ、晴れやかな青空が頭上に広がっているのが最大の理由である。 「まるで地球だ」  同じことを思ったのだろう。仲間の一人であるクリフが感激したように、周囲の木の幹に手を当てている。 「しかも、おおよそ五百年くらい前の地球の環境に近い。自然の植物なんて、もうネット図鑑でしか見たことないってのにな」 「ええ、本当にね。こんな緑豊かな惑星に今まで気づかなかったなんて不思議だわ。恒星を周回しない浮遊惑星なんて、今まで都市伝説のようなものだとしか思ってなかったのに。……クリフ、とりあえず遺伝子データを取っておいてくれない?地球に転送するわ」 「ラジャー」 「リーダー、あたしはどうすれば?」 「リリアンは気温と湿度を図って。あと大気中の気体も採取するから」 「はーい」  仲間達に次々と指示を出しながら、アラーナは自分達が乗ってきた宇宙船に近づいた。燃料もエネルギーも問題ないが、せっかく太陽が出ているなら発電してさらにチャージしておくに越したことはない。太陽光発電のパネルの角度を調節し、満タンになるまで充電できるように設定しておく。興味深い惑星だが、あまり長居することはできない。浮遊惑星の軌道は安定した物ではなく、ものすごくゆっくりとはいえ徐々に太陽系の中でも位置を変えて行っていることが知られている。いくら技術が進んだ昨今とはいえ、太陽系の外にまで出て行っていかれてしまうと、自分達が地球に戻れなくなる可能性もあるのだ。  何より、この惑星が太陽系から離れてしまうまでに、出来ることなら何度も足を運びたいのが本心である。――もし危険な異星人や生物が住んでいないのなら、この惑星こそ今の地球の救世主になりうるかもしれないのだから。
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