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それから雪乃は、時雨に振り向いてもらうために思いついた方法を片っぱしから試してめることにした。
だが、藤乃から「おいしい手料理を振るまう」という助言で作った煮物は見るも無惨な姿になってしまい、とても他人に食べさせられるようなものではなかったし、千里から「いつも明るくにこにこしている人って素敵ですよね」と話を聞いたので時雨に遭遇したときに笑顔を向けてみると、「何へらへら笑ってるんですか」と、鋭い視線をもらう始末。
「何なんですか、最近。変なものでも食べたんですか」
「……食べてませんよ」
かわいそうな人を見るような目を向けられ、さすがの雪乃もへこみ気味だ。確かに、時雨の前では変に肩に力が入って、いつものようにできなかった節はあるのだが、「結ばれる」という目的を達成するのはかなりの難題に思えた。
自然と、うつむく顔。
(わたし、このまま死んじゃうのかな……)
時折そんな恐怖に襲われて、考えすぎてしまい、夜も眠れなくなることがあるほどだ。元来、雪乃は楽天的な性格なのだが、さすがに何の進展もなく日々が過ぎていくことに不安を覚え始めていた。
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