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あの雑貨屋の店主にもらった懐中時計。あの時計の力は本物だったんだ。
それに世界がこうなったことで、きっと店主にも分かってもらえるはずだ。
怒りの感情なんて、人間には不要なのだと…。
「あ、そろそろゆうくんが幼稚園から帰ってくる時間ね」
ある程度の家事を済ませた私はエプロンを外し玄関を出た。
その時ちょうど、幼稚園のバスが家の前に到着した。
「ゆっ…佑介どうしたの!?泥んこじゃない!!」
バスから降りてきた佑介の姿を一目見て、私は慌てて駆け寄る。
佑介の服は泥まみれで、おまけにほっぺたにはかすり傷もできていた。
「お母さんごめんなさい!今日の帰り際に佑介くんと健吾くんが園を抜け出して水溜まりの中で遊んでいたみたいで」
バスから降りてきた先生は申し訳なさそうに頭をさげ、そう説明した。
見るとバスの中にはもう一人泥だらけの児童が。
いつも佑介と仲良く遊んでいる健吾くんが、同じく顔に傷を作りじっと私たちの姿を見下ろしている。
遊んでいたにしても、なぜ顔に傷ができているのか。もしかして健吾くんに怪我をさせてしまったのでは...?
「佑介、なにがあったの?どうして二人とも顔に怪我をしているの?」
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