エピローグ

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 緩く雑談しながら、修正部のメンバーは、サービス再開の日に向けて、前回の改変の分析や、その他の雑務を片付けて行く。  3日間、一つの修正作業にかかりきりだったせいで、緊急性のない業務は山積みだった。 「紗奈、出来たらこの資料を年代別にまとめておいてくれない? 雑に扱ったせいでファイルがどこかに行っちゃったんだけど……」 「赤いファイルですか? ついさっき見た覚えがありますけど、どこでしたっけ」 「あっ、一ノ先輩! それっすよ! 先輩の机の横にあるやつ、例のファイルじゃないですか?」 「本当だ。はい」  律希からファイルを受け取って、紗奈は資料の整理を始める。その時、その紙の束に、達紀がくれた基礎時代のニュースのまとめがあるのを見つけて、紗奈はハッと顔を上げた。 「そう言えば、優斗君とさやかちゃんが来た時代って、西暦何年でしたっけ?」  そう聞くと、篠木が「2018年だった気がします」と即答する。紗奈は急いで資料をパラパラとめくり、2018年のニュースのページを出した。  興味を惹かれたように、律希が立ち上がって、紗奈の手元の資料を後ろから除き込む。和弥も、 「紗奈ちゃん、2018年よりちょっと先の出来事を教えてよ。この先優斗君たちが暮らしてく未来の歴史を」  と、声を上げた。 「ええ、ちょっと待って下さい……」  紗奈と律希は、2人で記事を目で追いながら、あるところで顔を見合わせる。 「そう言えば……」 「忘れてた。2018年ってことは、かなりすぐだよね」  それは、基礎時代の歴史では、特に重要視される事柄だった。もちろん2人は、その事項をかなり深く知っている。しかし、2018年がその直前だという意識は、今まで一切持っていなかった。 「あずまパンは、どうなったんでしょうか……」  紗奈が呟くと、律希は資料を彼女から取り上げて、より詳しく記事を読む。容赦ない過去の現実を告げる文章に、律希は浅い息をついた。 「2018年の段階で、経営不振だったあずまパンが、これを乗り切れたのは思えないな」  律希の見立てには、さすがの紗奈も反論できない。和弥が、 「あの、ごめんなさい。まだピンと来てないんですけど、見せてもらえます?」  と言ったので、律希はバサリと資料を投げる。受け取った和弥は、その記事を中山と篠木にも見えるように置いた。 「2019年12月31日、中国湖北省武漢市で原因不明の肺炎集団発生の報告。2020年1月15日夜、日本国内で新型コロナウイルスの一例目が検知……そうだった。基礎時代といえばこれがあったんだ……」  和弥が読み上げると、篠木が次のニュースを指す。  ──GDPは、新型コロナウイルスの影響で実質の伸び率がマイナス4.6%となり、経済に大きな打撃。中小企業や個人営業店の廃業が相次ぐ。  修正部には、重い空気が広がった。
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