エピローグ

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「で、でも……分かりませんよ? もしかしたら、代替わりしてさやかちゃんか優斗君が経営を立て直したりしてるかも!」  ハッと我にかえって、ポジティブシンキングを取り戻した紗奈が言う。和弥は、 「優斗君ですら小6だよ? 代替わりは早過ぎでしょ」  などと言いつつも、続けてちゃんとフォローしてくれた。 「まあ、運命の転換点は何になるか分からんし、案外どうにかなってるかもね!」  後輩たちのそんな言葉に、律希たち他のメンバーは複雑な表情ながらも無理に納得する。  篠木は、机に置かれた資料を手に取って、パラパラと見ながら言った。 「そうですね。確かめる手段も無いし、そういうことにしておきますか……」  すると、そこで中山がパッと顔を上げた。 「あるんじゃない?」 「えっ?」 「私たちは時間警察よ。過去の事象が分からなくては、一体どうするの?」  そう言うと、修正部長はPCの修正ソフトを開き直す。すると、彼女の行動を読んだ律希がそれに倣い、篠木も何かにピンときたらしく表情を輝かせた。 「あまり使わないから忘れてました! 硬度検知TSは久しぶりです!」 「硬度検知TS?」  和弥と紗奈は、顔を見合わせて首を傾げる。 「それは……TSの一種ですか?」  TSとは、時空間中の波動やズレを読み取って、時間移動の形跡を辿る技術のことだ。高度な技術の為、これを使える人間は、対策部に5人、修正部には律希と篠木の2人しかいない。 「あっ、でも……TSだったら中山さんは出来ないっけ」  和弥が言うと、中山は「そうね」と答えつつ解説をしてくれる。 「硬度検知は、確かにTSの一種だけど、やり方は全然違うの。指定した範囲の時空間の硬度を測る技術で、波動を読み取るTSとは別。だから、TSソフトだけじゃなくて、修正ソフトでも出来るのよ」 「へー。そんなのもあるんすね!」  和弥はすぐに説明を理解して、感嘆の声を上げる。しかし、専門知識が詰め込まれた解説は、初心者の紗奈には少し難しい。 「和弥先輩、時空間の硬度って、どういう意味ですか?」  紗奈がそう聞くと、和弥は得意げに解説を始めた。 「時空間の硬度っていうのは、すなわち安定性のこと。硬度が高いと、その時代は安定しているから、歴史の改変が起こりづらいってことになるんだ」 「改変の起こりづらさ、起こりやすさを表す指標ってことですか?」 「そうそう。だから硬度検知TSは、時空間の中で、改変の起こりづらい時代or改変の起こりやすい時代はどこかを調べる技術なんだよ」  分かりやすくかみ砕かれた解説に、紗奈はまた新しい時空学用語を習得する。 「分かりました! じゃあ、今中山さんたちがやってるのは……」  紗奈がそう言うと、中山はふふっと微笑んで繋げる。 「硬度の高い時代を見つけて、そこに行く。そして、あずまパンがどうなったのかを見届けようっていう作戦よ」
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