5 燃えるような劣情と思惑

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「……?」  安西は怪訝そうな顔をし、指を引き抜いた。 「お前、もしかして普段から後ろ使ってんのか?」  安西の目に仄暗い感情が浮かぶのを認めて、俺は首を振る。 「違う。……一人でしてる、だけ」 「一人で?」  探るように見られるが、一人でしてるのは本当だ。  ただその理由が、安西が快く思うようなものではない。 「へえ」  安西の目が、より濃い炎を燃やして細められる。  気づかれた、よな。  焦りを覚えたが、その可能性を安西が考えていなかったはずもなく、今さら怒られるのも変な話だ。  それなのにどうしてか、浮気を見抜かれたような心境に立たされた。 「そういえば、新田とはどこまでしたんだ?」 「……」 「授業中、新田が俺を呼んだのを見ただろ?あの時、新田は俺に何て言ったと思うか」 「……え?」  予想外の問いに思考を巡らせるも、あの時何を言ったかまでは浮かばない。  すると安西は、乾いた笑みを浮かべながら続けた。 「君は俺の2番手だねって言ったんだ。まさかと思いつつも否定していたが、今はっきりと分かった」  安西が俺を睨むように見ながら、がっと勢いよく顎先を掴み、持ち上げた。 「っ……」 「それも、新田と次にするために解していたんだろ」 「……ち、が……」  具体的には、新田とするためというよりも、そうして一人ですることで気を紛らわしていただけだが、上手い言い訳が浮かばなかった。  新田を思いながらしていた行為、というのは紛れもない事実だからだ。  ただ、安西の痛いほどの視線を感じながらも、新田の意図が読めずに困惑した。  先生、なんで?  俺とはたった一度切りだったし、気の迷いだったんじゃないの?  結婚したって言うから、俺は。 「まあ、そんなお前だから俺は」  安西が何か言いかけて止めるが、混乱の中にいた俺は続きを促す余裕もなかった。  互いにすっかり熱が冷めた中で、揃って別々のことを考えながら立ち尽くしていた。
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