おうちデート(2)(※)

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おうちデート(2)(※)

 箸休めのもやしをゆでて盛り付け、プチトマトを添える。酢、醤油、ラー油、コショウをテーブルに並べ、ホットプレートを取り出し、ダイニングテーブルにセットする。  ホットプレートに餃子を並べて焼きながら飲み始める。グラスは、小沢が前日から冷凍庫で凍らしておいてくれたので、キンキンに冷えている。よく冷えたビールが喉に心地よい。 「熱いから、気を付けて。」 焼けたギョーザを小沢が取り分けてくれた。口に運ぶと、肉汁があふれ出す。皮もパリッと、上手く焼けている。 「おいしい・・・。」 「おいしい?よかった・・・。」 小沢は安堵の笑顔になる。 小沢もギョーザを一つ口に運び、ビールを流し込む。 「はーー、やっぱりギョーザには、ビールだね。」 「うん、おいしいです。」 次々と焼けたギョーザに手が出る。 「しそ入りも、ちょっとサッパリしておいしい・・・」 「だよね。最近気に入ってるんだ。」 「お店のもおいしいけど、こうやって家で作るのはやっぱり格別ですよね。」 「そういってもらえると、準備した甲斐があるなあ・・・。って、一緒に作ったんだけどね。」  二人で食卓を囲んで、自然と笑顔になる。小沢と一緒に過ごすようになってから、以前よりも食事を楽しむことが増えている。 「新しい発見もあって、面白いです。もやしも箸休めにいいですね。」 「それは、旅行先で餃子食べにいったときの真似。あの餃子も美味かったなあ・・・。祐実に食べさせたい。」  お腹いっぱいになるまで餃子とビールを堪能し、後片付けを済ませると、小沢がコーヒーを淹れてくれた。祐実がトイレに中座して戻ると、小沢はコーヒーを片手にソファに座り、テレビのリモコンを操作している。手招きをされてテレビに視線を移すと、「避暑地の恋人」が映っている。 「あああ・・・・っ」 「前に話してたドラマって、これで会ってる?」 「これ、です。・・・あってます・・・っ」 祐実は恥ずかしさで両手で頬を覆う。 「覚えてたんですか・・・」 「うろ覚えだけど・・・配信サービスと、ネットで検索して。これかどうか確かめようって。」 「わわ、恥ずかしい・・・」 「どのシーンがお気に入りとか、ある・・・?」 「だめ、内緒です・・・っ」 祐実は小沢の隣に座って、リモコンを奪おうとする。 「えーー、一緒に見ようよ。」 「やや、無理です。・・・私の耳元で囁くつもりでしょう。」 「バレたか。」 小沢が笑顔でコーヒーカップに口をつける。祐実もコーヒーを一口飲む。 テレビの画面には、「避暑地の恋人」の第一話が流れていて、主人公と相手役の出会いの場面が映し出される。 「こんなこと、あるのかねえ・・・。こんな出会いに憧れる?」 小沢が祐実の肩を抱く。祐実はちらりと顔を覗きこみながら笑う。 「ドラマですから、ドラマ。」 「ドラマ見るのは、ミステリーばっかりだからな・・・」 「あ、ミステリーが好きですか。」 「うん。推理小説とか読むのが好きだね。そこに並んでるでしょう。」 指を差された先のテレビの隣の本棚には、ハードカバー、文庫本が並んでいる。 「読んでた小説がドラマとか映画になると、気になって観るかな。結末は同じなのか、役者さんは誰が、どう演じてるのかなって。」 話しながら、手が肩から腰へと下りてゆく。頭の横にあった顔も、耳、うなじへと降りてくる。 「テレビ、見てていいよ。」 うなじへ口づけながら、服の上から胸の形を確かめる。 「や、みれない・・・です。」 更に小沢の手の動きが激しくなり、うなじに軽く歯を立てられて祐実は身をよじらせる。 「あっ・・・の、・・・お風呂。お風呂、借りていいですか。一日、料理もしたし、ビール飲んで、汗もかいてるので・・・」 「・・・一緒に入る?」 小沢がいたずらっぽく囁く。 「や、それは・・・」 「仕方ないな・・・。」 小沢は体を起こして立ち上がると、脱衣所のドアを開けた。祐実も立ち上がって近づく。 「タオルは、ここにあるの、使って。あ、シャンプーとか・・・」 「旅行用の小さいの、持ってきました。」 「そっか。ドライヤーはこの中にあるから、使って。」 洗面台の脇の引き出しをゆび差す。 「ありがとうございます。」 着替えの入ったトートバッグをもって脱衣所へ入り、扉を閉める。  風呂から上がると、小沢はテレビを見ていた。リビングは、換気のために窓を少し開けてあったが、まだ少し餃子のにおいがする。 「お先に、お風呂、ありがとうございました。」 「上がった?じゃ、俺も入ってこよう。適当に冷蔵庫のなかから飲んでいいからね。」 冷蔵庫を指さされ、祐実は台所へ入る。小沢が立ち上がり、祐実のそばに来る。 「何がいい?」 ドアを開きながら覗き込まれる。 「あ、お茶で・・・」 「お茶でいいの?」 「もう、食べすぎちゃったから。」 小沢が冷茶器を取り出し、コップにお茶を注ぐ。 「ウーロン茶だから、サッパリすると思う。」 「いただきます。」 祐実はソファに腰を下ろして、コップに口をつける。 テレビには、「避暑地の恋人」が未だ映っていた。
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