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元・妻(3)(※)
小沢は、祐実の手を引いてぐんぐん歩いていく。
「ちょっ、と、早い、です。」
はっと気がついて、小沢が足を止めた。
「ごめん・・・早く、あの場所から連れ出したくて。」
祐実の頭を撫でる。
「嫌な思い、したよね。やっぱり会うべきじゃなかった・・・」
「・・・嫌、でした。」
祐実は、声を絞り出す。小沢のスーツの襟を握る。
「私のなかに、こんな黒い感情があるなんて、知らなかった。嫌です、小沢さん・・・直哉さんを、獲られるのは。」
「祐実・・・」
祐実は、小沢の胸に額をつけた。
「今日、一人になるのは、嫌。」
祐実の、精一杯のおねだりだった。小沢は、直哉は自分のことを好きでいてくれるのだと確かめたかった。
小沢が祐実の肩を抱いて、足早に歩きだす。少し歩いた先に、ホテルの看板を見つけて、そこへ足を向ける。受付をすませて、部屋に入った途端に、小沢に強く抱き寄せられた。
「ごめん・・・祐実。嫌な思いをさせた。」
祐実の目から涙がこぼれた。
「私以外の人、見ないで・・・」
小沢が強く口づける。祐実も負けじと応える。靴を脱いで、小沢の上着の襟に手をかけて脱がせ、もつれるように小沢をベッドに押し倒す。
「祐実、あぶない・・・」
「今日は、私が、します。」
小沢の上に跨り、顔を近づけ、そっと唇を合わせる。
「こんな私は、嫌、ですか。」
「まさか」
祐実は、嫉妬の炎を瞳に宿して小沢を見下ろす。
「こんな祐実、も、いいよ。」
祐実が小沢の胸に手を当てる。小沢が祐実の体を支え、再び口づける。
上気した頬と、うるんだ瞳に小沢が反応して、祐実の体に押し当ててくる。
「もう、窮屈だから・・・脱がせて。」
祐実がネクタイを緩め、シャツのボタンを外すと、小沢は自分で脱ぎ捨てる。次に、ベルトに手をかけ、下着の上から小沢のものに触れると、小沢の腰がびくりと跳ねる。
「・・・祐実の、せいだよ。」
そのまま、下着の上から口づける。再び小沢が体をびくりと跳ねさせて、祐実の顔に手を添える。祐実はうっとりと下着に手をかけた。
小沢は顔を逸らし、こらえるような息遣いが荒くなっていく。自分が触れることで、相手が感じてくれていることが、こんなに嬉しいことだなんて、・・・知らなかった。祐実はうっとりと舌を這わせる。自分の下腹部にもしっとりと熱が溜まり、触れてもらいたくなる。
「そろそろ、限界。」
小沢は祐実の手を取り、足の間に手を滑り込ませる。
「あ・・・」
「何もしてないのに・・・すごいことになってる。」
体を起こして祐実を引き寄せると、足を割って自分に跨るような体勢に導き、下着の上から、自分のものをあてがう。
「今日は、祐実がしてくれるんだったよね・・・?」
少し意地悪な光を宿した瞳に、祐実はぞくりとしながら、そのまま腰を落とすと、下着越しに、少し入ってくる。
「あ・・・」
祐実はたまらず、自ら下着に手をかけて、小沢のものを受け入れる。全身にびりびりと快感が巡り、体をのけぞらせる。
「は・・・」
「こ、ら、・・・祐実・・・」
小沢はきつく祐実の体を抱きしめる。
祐実は、目を開いて小沢を見る。小沢が眉間にしわを寄せ、せつなそうな顔をしている。もっと、自分で感じてほしい。いろんな表情を見たい。
「だめだ、祐実・・・。まだ、付けてない。」
祐実の腰をぐっと掴む。祐実はうつろな瞳で小沢を見る。
「いい、です。小沢さんなら・・・」
小沢との子どもなら、ほしい、産みたい、と思った。祐実はもっと、と小沢にしがみついてと腰を揺らす。
「ちょっ・・・と・・・待て・・・っ」
小沢が祐実を力強く抱きしめ、ぶるっと全身を痙攣させる。
「ちゃんと、服、脱いで・・・。」
体を離し、祐実の服を脱がせていく。残った自分の服も脱ぎ捨てると、避妊具をつけながら祐実の上に覆いかぶさった。
「今度は、俺の番だよ。」
小沢が中に入ってくる感覚に、祐実は全身が粟立ち、シーツを掴む手に力を込めた。
「なんか・・・けがの功名っていうか。こんな祐実が見れるなんて、ちょっとだけ感謝っていうか。」
祐実の髪の毛を梳かすように撫でながら、顔を覗き込む。
「小沢さん・・・」
「呼び方、戻ってるよ。」
「・・・直哉、さん。」
小沢は嬉しそうに微笑んで、祐実に口づける。
「こんなことしたの・・・、初めてです。」
我に返ると恥ずかしくなり、枕に顔をうずめる。小沢は祐実の髪の毛を手にとり、唇をつけた。
「これからも時々、こんなこと、してくれてもいいよ。」
祐実は頭を左右に振りながら、小沢の胸に顔をうずめる。
「あと」
小沢が祐実の背中に手をまわし、ぽんぽん、と手のひらで軽く触れる。
「将来を見据えて、っていうの、本気だから。」
祐実はどう答えてよいかわからず、小沢の背中に回した腕に力を込めた。
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