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二人のクリスマス(2)
クリスマスマーケットを十分に堪能した二人は、直哉の予約したホテルへ移動し、チェックインを済ませた。
部屋のドアを開けると、キングサイズのベッドが見え、二面ある部屋の窓から、大きなタワーが目の前に見える。
「すごい・・・圧巻。」
「暗くなると、ライトアップされて綺麗だろうと思って。タワーの展望台は、登ったことある?」
祐実は振り返って首を振る。
「高いところ平気なら、明日登ってみようか。天気がいいと富士山も見えるはずだよ。」
笑顔で頷き、窓際に置かれたソファに手をかけて窓の外へ視線を移す。ライトアップされたタワーのオレンジ色のライトが温かい雰囲気を醸し出している。
「ケーキとシャンパンは、予約しておいたんだ。ただ、クリスマスマーケットでどのくらい食べるかがわからなくて食事は予約してない。お腹がすいたら、ルームサービス頼もう。」
「はい。まだ今は大丈夫です。さっきたくさん食べちゃいましたし。・・・直哉さんは、平気ですか?」
頷いて返事をする直哉に促されてコートを脱ぐ。白いコートの下は、ややタイトなデザインの濃いグリーンのワンピースで、今日のために買ったものだ。直哉がコートをハンガーにかけてくれる。
戻ってきた直哉に、後ろからそっと抱きしめられた。
「すごく、綺麗です。ずっと見ていられそう。・・・直哉さん、ありがとう。」
「祐実のほうが、綺麗だ。」
「もう・・・。」
祐実は直哉の腕をぽんぽんと叩く。
「このワンピースも、よく似合ってる。」
「クリスマスカラーにしてみました。」
笑顔で視線を上げると、直哉も優しく微笑む。
「風呂からも、見えるよ。」
祐実が浴室へ行こうとするところを、直哉がぎゅっと引き留めて囁く。
「あとで、一緒に入ろう。」
「ええっ・・・」
「どうせ、見えるし。」
視線を移した先には、ガラス張りの浴室とシャワーブースが見える。祐実は直哉の腕に顔をうずめる。抱きしめられた直哉の胸に体を預けると、直哉の体温が伝わってくる。温かい。祐実はうっとりと街の灯りを眺めていた。ふいに、直哉の腕に力がこもる。
「祐実・・・。結婚、しよう。」
耳元で、いつもよりも少し低めの声が甘く響く。祐実の全身に熱が走る。鼓動が跳ねる。直哉の腕が、少し震えている。
「祐実が、いろいろと慎重になる気持ちもわかってるつもり。俺だって、一度結婚に失敗してる。けど・・・そんな失敗への恐怖も吹き飛ぶくらい、祐実とこれからもずっと一緒にいたいと思ってる。」
喉の奥がぐっとが熱くなり、言葉が出ない。心臓が、直哉にも伝わるのではないかと思うくらいに激しく音を立てている。
「今日も、その前も・・・温泉旅行のときも思った。些細なことでも、一緒に笑って、共感できて、楽しめる。・・・祐実と過ごす時間が、すごく楽しいんだ。」
それは祐実も同じだった。もっと同じ時間を共有したい。最近はそう思っていた。
「いろいろと、心配なことがあるなら、ひとつづつ解消していこう。で、祐実が、納得できたタイミングでいいから。俺は、いつでも。」
祐実は直哉の腕に手を添える。
「ダメ、かな?」
「ううん・・・。ありがとう、直哉さん。」
祐実が振り返って直哉の腰に腕を回し、胸に顔をうずめる。直哉も、ドキドキしているのだとわかる。直哉の腕のなかは、温かくて、落ち着く。そのまま目を閉じて、直哉の言葉の余韻に酔いしれる。
何か言おうと口を開いたところで、部屋のチャイムが鳴る。直哉が対応すると、予約していたケーキとシャンパンが運ばれてきた
「わあ、かわいい・・・」
雪だるまをかたどったケーキに、祐実ははしゃぐ。
「じゃあ、乾杯しますか・・・。」
ポン、とボトルの開く音がして、グラスにはちみつ色のシャンパンが注がれていく。
「シャンパンの音って、クリスマスっぽいですよね。」
直哉が微笑んでシャンパングラスを祐実に手渡す。
「メリークリスマス」
「メリークリスマス、直哉さん。」
直哉が祐実の肩に手をかけ、ちゅっと軽く口づける。
「ケーキ食べる?・・・この雪だるまの中は何味なんだろう。」
グラスを置いて、首を傾げながら雪だるまのケーキを眺めている直哉を見て、かわいい、と思わず笑みがこぼれた。
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