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二人のクリスマス(3)(※)
シャワーブースで髪と体を洗い、バスタブへ体を沈めると、直哉に合図を送る。直哉が気付いて服を脱ぎ、シャワーブースへ入る。
アメニティの入浴剤はラベンダーの香りがして、湯がうすい紫に色づき、少しとろみがついている。
「贅沢・・・」
バスタブも広くて、祐実がめいっぱい足を延ばしても未だ余裕がある。肩まで浸かって体を温めた後、窓側へ近づいて外の景色をじっと眺める。
「いい眺めだね。」
身体を洗い終えた直哉がバスタブへ入ってくる。湯があふれそうになるギリギリで波打つ。
「はあ・・・あったまるね。」
バスタブのふちに腕をかけ、体をもたれかけると、濡れた髪の毛をかきあげる。その仕草に見とれていると、視線を感じた直哉が手を差し出す。
「こっち、おいで。」
そういわれて、直哉のそばに近づく。ふと視線を上げると、バスタブのガラスの仕切りの上に、ブラインドが設置されていることに気が付いた。
「あれ、これ・・・」
「うん、あるね。」
直哉は楽しそうに笑う。
「もう・・・、これ下ろせば、見えなかったのに。」
祐実は抗議する。
「でも、ほら・・・」
窓の方を指さす。
「ブラインドが無い方が、部屋の方まで見渡せて、景色は綺麗だよ。」
視線を移すと、バスタブから浴室の窓と部屋の窓、両方から夜景が見渡せる。
「そうですけど・・・。」
直哉が手で湯をすくって、祐実の肩にかける。祐実もお返しに、と直哉の肩に湯をかける。二人で視線を合わせて、ふっと微笑む。
「ちゃんと、温まった?」
直哉が頷いた祐実の頬に手を添え、そっと口づける。その手が耳、うなじへと延びていき、目を閉じた祐実が軽く唇を開くと、舌が差し込まれ、絡み合う。唇を離すと、祐実はもうとろけるような表情を浮かべている。その表情をみた直哉もスイッチが入る。
「そんな色っぽい顔して・・・」
祐実を抱きかかえるように自分の身体に乗せ、首筋に軽く口づけて音を立てると、祐実がびくんと体を震わせる。祐実が直哉の肩に手を添え、視線を絡ませると、どちらからともなく唇を合わせた。
「・・・もう、上がる?」
祐実は伏し目がちにうなづいた。
ペリッ、と避妊具の袋を開ける音がする。祐実は薄く目を開いて、直哉の手を取る。
「や・・・、そのまま、ください。」
「でも・・・」
「ちょっとだけ、で、いいですから・・・」
直哉がそのまま中に入ってくると、体中の細胞が歓喜するように熱が広がり、祐実はびくびくと全身を震わせる。
「ダメなんだって・・・祐実の中、よすぎるから・・・」
直哉はこらえるようにふうと息を吐くと、祐実に触れる指を背中、脇腹を這わせ、太ももから膝裏へと移動させていく。はだけたバスローブから見えた型のラインが煽情的で、祐実はうっとりとした表情で直哉に手を伸ばす。直哉が祐実の伸ばした手を引いて、つながったまま自分と向かい合う体勢にすると、閃くような強い刺激に祐実が直哉の肩にしがみつきこらえる。
「ふっ・・・あ・・・」
「ココ・・・、イイの・・・?」
祐実の身体を支えながら、ゆっくりと下から突き上げ、揺らすと、そのたびに祐実が中を締め付け、直哉も顔をしかめる。
「わ、かんない・・・」
探るように小刻みに押し当てられて、祐実はせつなげな声を上げる。
「わかんないけど・・・、もお、ずっと・・・」
祐実の首の後ろに手を回し、引き寄せるように口づけると、祐実ももっと深く、というように腕を絡ませしがみつく。
離れる瞬間、名残惜しい気持ちにとらわれる。いつも直哉は終わったあと、祐実の身体をタオルで拭き、その後に自分の汗を拭いて、祐実の隣に横たわる。祐実はもうそのまま眠ってしまいそうになるくらい体中の力が抜けている。
「いつも、直哉さんは余裕があるっていうか・・・。」
「体力は祐実よりはあるだろうけど。祐実さえよければ俺はいつでもオッケーだよ。」
額の汗をぬぐいながら、祐実の髪の毛をなで、軽く唇を合わせる。
「ずっと祐実とつながってたい。」
祐実は恥ずかしくて枕に顔をうずめる。
「祐実は、どうかなって・・・。満足してくれてる?」
直哉に抱かれてから、これまでにない自分が次々と湧き出てくるように感じていた。こんなに貪欲だったのか、と自分でも驚いている。
「直哉さん、に・・・いろいろ新しい世界を見せてもらってます。」
直哉は身を乗り出す。
「新しい世界?どんな・・・?」
「や、その・・・お風呂でしちゃったりとか・・・。」
「嫌?」
「・・・たまに、なら・・・」
恥ずかしそうに見上げる祐実を見て、直哉は愉しげな表情を浮かべ、頬に口づけた。
夜中にふと目が覚めた。直哉は隣で寝息を立てている。まだ外は暗い。枕元に置かれたペットボトルの水で喉を潤し、窓から見えるタワーの灯りをぼうっと眺める。
今日、返事をしそびれてしまった。自分も、直哉ともっと一緒にいたい。その気持ちを素直に伝えればよかったのに。
返事をしようと口を開いたけれど、言葉が出てこなかった。踏み出すことで壊してしまうものがあるかもしれない、という不安がよぎった。
祥吾の時みたいに・・・直哉は、もし、自分の両親と自分の板挟みになったら、・・・どうするだろう。自分を守ってくれるかもしれないが、今、良好な関係であるものを自分が入ることで壊したくはない。今、これだけでも十分幸せなのに。前の失敗が祐実を臆病にしていた。
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