ハッピー・バレンタイン(2)(※)

1/1
前へ
/41ページ
次へ

ハッピー・バレンタイン(2)(※)

 クリスマスマーケットでプレゼントしてもらったランタンは、直哉の家で過ごすことが多いからと、ベッドルームに飾ることにした。ランタンがサイドテーブルの上でほんのりと灯り、重なる二人の身体の影を映す。  直哉の体は温かい。布団のなかで腕に包まれながら、祐実は卓上カレンダーに目を留める。 「・・・そういえば、もうバレンタイン。直哉さん、チョコレートは・・・」 といいかけて、ふと気が付く。  もう、1月も終わり。そういえば・・・、今月、まだ、生理が来ていない。 もともと不順なほうだから、ひと月くらい飛ぶことはあるし、最近仕事が忙しかったこともあって、忘れていたけれど・・・。  でも、直哉はいつも避妊してくれていた・・・と思いながら、そういえば、最後まではしていないはずだけれど・・・と思い当たる節があることに気付く。  直哉の元妻に嫉妬して、自分から押し倒してしまった夜。あのときは夢中で、直哉が着ける前に自分から受け入れていた。祥吾のところに行ったときは直哉に嫉妬されて、お風呂で全身を洗われ、そのまま・・・。  クリスマスデートでプロポーズしてくれた夜は、直接、直哉を感じたくて、自分からお願いしてしまった。・・・その後の年末年始の休暇も、なんどか直哉の家で一緒に過ごしている。  思い出しながら恥ずかしくなって、祐実は布団の中に顔を埋める。本当に、いつの間にこんなに貪欲になっていたのだろう。もっと直哉に触れられたい、触れていたい。体温を感じていると安心する。今日だって、直哉は祐実の体調を気遣ってくれていたのに、自分が触れてもらいたくて、抱き着いて、誘うように自分から唇を重ねた。  11月・・・12月は、生理がきたのはいつだったっか?と思い出しながら、何週間空いているのか、頭のなかで計算してみる。このところ胃の調子が良くないのも、仕事の忙しさのせいかと思っていたけれど、もしかしてこれは予兆なのか。 思い当たりながらも、いろんな心配も胸によぎる。  もし、妊娠していたら。前は、胃の不調なんてことはなかったけれど、何か問題があるのだろうか?問題がなかったとして、今回は・・・、ちゃんと育ってくれるだろうか。不安な要素ばかりが浮かんでしまう。 「もう2月か・・・。チョコレート、くれるの?」 直哉の言葉に、我に返って慌てて返事をする。 「それは、もちろん・・・。好みとか、ありますか?」 「俺は、チョコレートだけよりも、ナッツとか、ドライフルーツと組み合わせたもののほうが好きだな。」 「ふふ・・・。わかりました。こんど、会社帰りにでもデパート寄って選んできます。」 直哉の手に指を絡めると、優しく握り返してくれた。  なんだか、ドキドキしてきた。・・・直哉は、喜んでくれるだろうか。プロポーズしてくれたけれど、子どものことは話していない。これから仕事も忙しくなるタイミングで、迷惑ではないだろうか。  でも、自慢すると言ってくれた直哉の言葉を、いつも自分に愛情を伝えてくれる直哉を信じたい。 「チョコレートもいいけど、祐実がいいな。」 「私・・・、って。」 「もちろん、もらうけどね。」 そういって祐実を抱き寄せ、頬に口づける。祐実は直哉の背中に手を回して、体を寄せる。  まだ、確定するには早い。近いうちに、ドラッグストアへ行こう、と密かに決めた。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1427人が本棚に入れています
本棚に追加