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short side story 2(祥吾)
新卒で入社した会社で、後輩の世話係を任された。最初は、自分もそんな順番が回ってきたのか・・・と思いながら、後輩の世話と自分の業務とをこなしていた。
が、後輩の世話をしていると、自分の仕事が進まない。自分の仕事に集中していると、後輩にいろいろと聞かれたり横やりが入って、うまく進まない。上司に相談しても、それをうまく回していくのが役回りだと言われ、嫌になって転職することにした。
幸い、すぐに転職先は見つかって、転職先の会社で、同い年の同僚として紹介されたのが、祐実だった。
「わからないことがあったら、彼女に聞いてね。」
「安藤です。よろしく。」
隣の席に案内され、行先掲示板や離席時のルールなどを説明してくれた彼女は、凛としていて、同い年なのに年上のお姉さんのような印象だった。
飲み会の席で、最初の乾杯のビールの後は、ウーロン茶やオレンジジュース。飲まないの?と聞いたら、
「あんまり強くないから。」
とはにかみながら答えるその笑顔が、ちょっとかわいいと思ってしまった。
一緒に仕事をするうちに、彼女は周りを見て気配りができる人なのだとわかった。困っていると、様子を見て声をかけてくれる。打ち合わせのときは、誰に言われることもなく議事録をとっていて、それを全員にメールしてくれる。上司にスケジュールを提示されたときにも、自分の担当分はかならず期日前に終わらせて、他の遅れている人のフォローに入っている。
自分ではとても気が回らないなあ、と感心してみていたら、いつの間にか目で追っていて、他の社員よりも、もっと自分のことをかまってほしい、と思うようになっていた。
彼女がいたことはある。だけど、いつも告白されてOKするだけだったから、自分から気になる子にどう伝えればよいのかがわからなかった。
「好きかもしれない。」
残業したあと、二人で駅への道を歩いていたときに、言ってしまった。
祐実は呆れたような表情を浮かべて、目を逸らす。次の言葉が出てこない。黙ったまま、祐実のコートの袖を掴む。
「・・・じゃあ、付き合う?」
助け舟を出すような祐実の言葉に、ぱっと顔を上げて、頷いた。
週末は、ショッピングモールに行ったり、映画に行ったり、二人で気ままに過ごした。改まった席が好きじゃないといえば、クリスマスも、誕生日も、家でちょっとしたごちそうを作ってくれた。今まで付き合った彼女みたいに、記念日を一緒に過ごしたいとか、フレンチのディナーに行きたいとか、面倒なことは何もいわなかった。とても、居心地がよかった。
そんな彼女だから、実家の親ともうまくやっていけるだろう、と思っていた。子どもだって、一度できたんだから、きっとすぐできる。そうすれば、親だってもうなにも言わなくなる。
「私がいなかったら、祥吾は今までどおり、お義母さんとうまくやっていけるでしょう。私のせいで、あなたまでお義母さんと険悪になることなんてない。」
彼女の度量に甘えていた結果、別れを懇願された。
最後まで、祐実は親のことを悪く言わなかった。もっと、自分が祐実のことをかばっていれば。嫌なものは嫌だと言えたら。欲しいものを、欲しいと言えたら。違う結果になっていたのだろうか。
彼女は、新しい恋人と結婚するらしい。子どもができた、と言っていた。ちらりと見た感じだと、独占欲が強そうだけど、しっかりと引っ張っていってくれそうな印象だった。いつも頑張り屋の祐実には、自分みたいな頼っちゃう奴よりも、頼れるタイプの人がいいのかもしれない。
自分は、まだ当分は一人かな。
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