short side story 4 (その後の二人 1)(※)

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short side story 4 (その後の二人 1)(※)

 安定期に入って、祐実の体調はかなり安定していた。あんなに食べられなかったのが嘘のように、今度は食欲が止まらない。その姿を見て、直哉は嬉しそうに料理の腕をふるう。おかげで体重管理が大変になりそうだ。  今日は、二人で病院の両親学級に参加をしてきた。助産師さんが、産前産後の情報をインプットしてくれる場だ。  入浴を済ませ、リビングでくつろいでいた時に、直哉が思い出して呟いた。 「想像はしていたけど、あんなに動きずらくなるとは・・・。」 おもりを入れたエプロンをつけて、妊婦さん体験をした直哉は苦笑した。 「これから、もっと大きくなるんだろう・・・。もう、祐実は風呂掃除はしなくていいから。」 ソファで隣にすわると、直哉は祐実のお腹をそっと撫でた。 「産休は、いつからか決めた?」 「予定日から計算すると、7月末なんですけど、少し有給も使わせてもらおうかと思ってます。」 「うん、いいと思う。産後は忙しくなるんだし、今のうちにやりたいことがあれば、体調がいい間にさ。・・・しかし、あっという間だな・・・。」 「そうですね。」  祐実は自分の肩を抱く直哉をじっと見つめて、頬に口づけると、直哉が唇に返してくれる。離れがたくて、自分から何度も唇に吸い付き、唇が開いたところに舌を差し込む。そのまま、直哉の首に縋りついて、自分の身体の重みでそのまま後ろに倒れこむと、直哉が慌てて腕で体を支える。 「こら、祐実、あぶない・・・。」 「だって・・・。直哉さん、妊娠してから、全然・・・」 してくれない、と拗ねた目で見つめる。妊娠がわかってから、直哉は相変わらず優しく祐実に触れるものの、抱こうとはしなかった。直哉は目を逸らす。 「いや、祐実もつわりで辛そうだったし。」 「つわりは、今落ち着いてます。」  さすがに、つわりがひどい時はそんな気分にもなれなかった。祐実は直哉の首から手を離さずに見上げる。 「お腹大きいと、嫌ですか?」 「そんなことは、ない。」 「直哉さんは・・・、したくならないんですか?」 自分の手に力を込めて引き寄せると、直哉は祐実のうなじに顔を埋める。 「それは・・・。祐実と一緒にいて、ならないわけがない。けど・・・、我慢してる。」 「我慢・・・?」 祐実は直哉の顔を覗き込もうとするが、直哉は顔を埋めたまま動かない。 「だって・・・、お腹の子に、なにかあったらって・・・心配だろ。」 「それは・・・、あんまり激しいのは、私も怖いですけど。今日、両親学級でも助産師さんが話してたじゃないですか。直哉さんがいろいろ読んでた本にも、書いてませんでした?」 「それは・・・。まあ。」  祐実は、直哉の背中を誘うように指でなぞる。 「こら・・・」 直哉は祐実の手を取る。 「一度タガが外れたら、危ないなと思ってさ。無理させちゃいそうで。」 そういって、祐実の頬に唇を寄せる。 「無理な時は、ちゃんと言いますから。」 「・・・祐実は、無理じゃないときにも無理っていうから・・・」 「直哉さん・・・っ」 冗談めかしていう直哉に、祐実は頬を染めて抗議する。 「ははは、わかった・・・。じゃあ、二回目は、無しで。」 祐実の顔を両手で包んで、そっと口づける。 「本当に、無理はしないで。・・・ちゃんと、教えて。」 「・・・はい。」  ベッドの上で、直哉は、焦らすようにゆっくりと祐実の肌に触れる。祐実も負けじと直哉に手を伸ばす。直哉のこらえる表情を見て、更に気持ちが昂り、久しぶりの肌の感触に、息遣いも荒くなる。 「この、肌が触れ合う感じ・・・。すごく、安心します。」 「俺も。」  身体を離して汗を拭いた後、後ろから抱きすくめられて、祐実は目を閉じる。 「やっぱり、大きくなってるよな。」 そんなことをいいながら、祐実の胸を手のひらで包み、捏ねるように動かす。 「もお、ダメですよ・・・。一回だけって。」 「わかってる・・・。もうちょっと、触るだけ。柔らかくて、気持ちいい。」 そんなことをいいながら、うなじに唇をつける。 「触るだけって・・・。」 「ほら、やっぱり・・・、いくらでも、祐実に触りたくなる。」 振り向いた祐実の額に口づけを落とす。 「・・・私だって、触りたいし、触ってもらいたく、なります。」 ねだるような目をした祐実をぎゅっと抱きしめる。 「まずい。祐実は、俺の自制心を試してるな?」 「違います。・・・一緒に、我慢しましょう、って意味です。」 天を仰ぐような仕草を見せた直哉の背中に、祐実は手を回した。
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