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short side story 5(その後の二人 2 )(※)
今日は、祐実の両親が遊びにきていた。
子どもも2歳になり、大変ながらもかわいい盛りだ。祐実は子どもが1歳になるタイミングで職場に復帰し、時短勤務をしている。
「たまには、二人でゆっくりしてくれば?愁なら、私たちが見てるから。」
すっかり孫にメロメロの両親は、半年に一度くらい、泊りで遊びにくる。それぞれの実家にはあまり間を開けずに顔を見せているせいか、愁も甘えさせてくれる祖父母にすっかりなついていて、祐実と直哉がいなくても全然平気だ。そして、むしろ孫とゆっくりさせろとばかりに、祐実と直哉をデートに送り出す。
「じゃあ、夕飯までには帰るから・・・」
「夕飯も、二人で食事してきたら?私たちは愁ちゃんとファミレスでも行って食べてくるから。いつも子連れの食事はせわしないでしょ。美味しいもの食べに連れてってもらいなさいな。」
祐実と直哉は顔を見合わせ、
「それなら・・・」
と、家を出た。
「さあ、どこに行こうか。何か、したいこととか、見たいものとかある?」
車にエンジンを掛けながら直哉が尋ねる。
「ん-ー・・・。直哉さんは、何かないですか?私、とくに買い物したいものとかも今は無くて・・・。」
「そうだな・・・。」
直哉は祐実の手を取り、撫でる。
「本当に、祐実は何も思いつかない?」
「そうですね・・・。」
「じゃあ。」
直哉は祐実の手を持ち上げ、指にそっと口づける。直哉が、甘い言葉を吐くときのお決まりのサインだ。祐実はドキリとする。
「俺は、祐実が欲しいな。」
「ほしいって・・・。」
「久しぶりに、ホテル、行きたい。」
「昼間ですよ・・・。」
「昼とか夜とか関係ない。・・・ダメ?」
珍しく甘えるような視線を向ける直哉に、祐実は頬を染めて応える。
「・・・いいです、よ。」
直哉はニコリと笑って、ハンドルを握る。
産後、しばらくは痛みがあり、母乳育児をしていたこともあって、あまり積極的には慣れなかったが、出産から1年経ったころから、やっと前と同じように歓びを感じるようになれた。それまでの間も、直哉は無理をせず、祐実の体調や気分を尊重しながら接してくれていた。
「ホテルなんて・・・すごい久しぶり。」
思い返してみても、記憶には数回しかない。少なくとも、子どもができてからは初めてだ。部屋に入り、大きなベッドが目に入ると、なんだか緊張してしまう。直哉は、上着をハンガーにかけると、浴室へ向かって湯を張り始めた。
「祐実と二人きりで出かけるのも、久しぶりだよ。」
そういいながら、祐実の肩に手をかけ、そっと口づける。
「祐実、もっと・・・声、出して。声、聞かせて。」
家では、子どもを寝かしつけた後、直哉の書斎やリビングのソファで抱き合って、声もなるべく出さないよう我慢していた。ホテルの広いベッドと部屋の解放感に、喘ぎ声もだんだん大きくなっていく。
直哉の愛撫も、いつもよりもじっくりと丁寧に感じられて、体を離すころには、祐実は疲れ果て、喉もカラカラになっていた。直哉は乱れた呼吸を整えながらも、まだ余裕がある様子で、祐実の隣で肘をついて髪の毛を撫でる。
「子ども預けてデート、っていうのはちょっと後ろめたさがなくはないけど、二人の時間ができるのはありがたいね。・・・夜、起きてくるのを気にしなくていい、っていうのも。」
「それは、まあ・・・。」
相槌を打ちながら、はっと気づいた祐実は直哉の方を見る。
「まさか・・・。二人目を急かされてる?」
「はは・・・考えすぎじゃない?・・・だとしても」
直哉が上からのしかかる。
「俺は、そろそろどうかなって思ってるけど。」
「え・・・」
「どう?・・・まだ、早い?」
直哉の問いかけに、照れながら笑顔を向ける。
「・・・私も、ほしいです。」
直哉がニコリと笑う。
「じゃあ、今日から、使わないよ。」
「え、今日から・・・?」
「一度で済むわけがないでしょ。」
当然、というような笑みを浮かべる直哉に、祐実はそういえばこういう人だった、と思い出して唖然とする。
直哉と直接つながっている感覚に身悶えする。奥を突かれて、下腹部に熱が溜まっていく。
「も・・・」
熱のこもった視線を直哉に送ると、直哉も眉間にしわを寄せ、こらえているのがわかる。きゅっと胸の先端をつままれて、溜まった熱がはじけて全身に広がっていく。祐実が全身を震わせている様子を見て、ぐっと腰を引き寄せる。
「祐実・・・、俺も・・・」
温かい感触と同時に、多幸感が広がっていく。直哉は、ゆっくりと腰を動かしながら、祐実に深い口づけを落とす。祐実もそれにこたえるように、腕を絡ませ、求めるように舌を動かす。
直哉が体を離そうとしたとき、ぎゅっと腕に力を入れる。
「もう、ちょっとだけ。」
祐実の言葉に直哉は笑みを浮かべ、再び口づけた。
祐実は直哉の腕のなかでまどろむ。直哉は、満ち足りた表情で祐実の頬を愛おしげに指でなぞる。
「ホテルも、たまにはいいね。・・・また、来よう?」
直哉の腕に顔を埋めながら、祐実は黙って頷いた。
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