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糸が切れてしまったようにホームのベンチに座る俺に、誰かが声をかけてくる。
「あの、大丈夫ですか?」
顔を上げれば、ものすごく美人でスタイルの良い女性が立っていた。
この人、さっき痴漢に遭っていた人だ。
「あ、いや、僕は大丈夫です。あなたこそ大丈夫でしたか?」
「はい。怖かったんですが、あなたが助けてくださったので」
女性はホッとしたようにふにゃりと笑う。
俺の胸がドキドキと脈打つ。
すると、女性が遠慮がちにこう聞いてくる。
「もしよかったら、連絡先を教えてくれませんか?」
「えっ?」
「あ、あの、ご迷惑でしたら良いんです。今後、お礼にお食事を、と思いまして」
女性は照れくさそうに言うと、うつむいた。
別に邪な気持ちがあって助けたわけじゃない。
正直、100万を失ったのは痛いと思ったんだ。
それでも、見て見ぬふりなんかできなかった。
今は助けて本当に良かったと思う。
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