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その日、家に帰ると、僕の部屋に男性がいた。
ブタの貯金箱をくれたあの不思議な男性だ。
「おい、不法侵入だぞ」
「貯金箱の回収をしにきただけですよ」
男性はそう言うと、ブタの貯金箱を抱えていた。
「ああ、もうどうせ0になったしな」
「ええ。今は0ですが、あなたが笑顔で過ごしたおかげで、ラブコインが貯まりまくりでしたよ」
「は? ラブコインってなに?」
「ご説明しませんでしたっけ? 笑顔でいると縁を引き寄せるんです。笑顔で貯まるのはラブコインです」
「お金じゃないの?」
「違いますよ~! そんなうまい話があるわけないでしょ~!」
男性はそう言うと、豪快に笑った。
こいつ、殴ったろか………。
「あなたが頑張ってくれたおかげで、ラブコインはたっぷり貯まって、ご縁があったはずですよ、今日」
男性の言葉にハッとする。
まさか、今日、痴漢から助けた女性は……。
「そういうわけで、これは回収しますね~。また困っている人に貸し出しますんで」
男性はそう言うと、こちらに手を振る。
「ま、待ってくれ! あなたは一体、何者なんだ?」
「こう見ても恋のキューピッドです」
男性はそう言ってニカッと笑うと、煙のように消えた。
俺は誰もいなくなった部屋でポツリと呟く。
「……キューピッドには見えねーよ」
その直後、スマホに連絡が届く。
今日、助けた女性からの食事のお誘いだった。
結局、100万円はゲットできなかった。
でも、お金以上に大事なものを手に入れられたんだ。
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