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死んだあとで、人がどうなるのかなんてことは誰にもわからない。生きている人間が、死者の国を覗くことなどできないからだ。
ただ一部の宗教などでは、神様や仏様の前に引き出されて、審判を受けるらしいとは聴いている。だからなんとなく桃太郎も、自分も死んだらそうなるだろうと思っていたのだ。
そして、己が地獄に堕ちるかもしれないなんて、考えたことさえなかった――そう、実際に自分が神の御前に引き出されるまでは。
今は違う。
誰にとっても、地獄は用意されている。絶対的な正義など何処にもない。何故なら正義の対極もまた、別の正義であるからだ。
――今の僕に、何ができる?
目を開いた時。桃太郎を待っていたのは、白い砂浜と海。
そして多くの子どもたちにいじめられている、赤い肌に角の生えた少年の姿だった。
――ちっぽけかもしれない。自己満足かもしれない。何もかもを変えるなんて、そんなことはできないかもしれない。でも。
もう、知るべきことから逃げない。真実を受け止めて、出来ることを、するべきことを考え続けると決めた。それが、生まれ変わった自分の贖いであり、守るべき未来であるのだからと。
「おい、待てよ!」
砂を蹴って、かつて桃太郎だった少年は駆けだしたのだった。
英雄になんかなれずとも、最初のたった一人を救う、そのために。
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