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「鬼と呼ばれた者達は皆、体の色が変色し奇形をもたらしてしまう病気にかかった人間達なのです。彼等は気持ち悪い外見だと蔑まれ、鬼が島に追いやられました。しかし、岩ばかりの無人島ではまともに畑を作ることもできません。漁に出れば、漁村の人々が罵声を浴びせて石を投げてきます。彼等は生きるためには、漁村の人々から命を守る為の行動をしなければいけませんでした」
「だから金品を盗んだり、殺されそうになった時には殺さなければいけなかったと?」
「ええ。しかし、漁村の人々は鬼たちを人間とは認めていません。化け物から身を守っているだけ、彼等は退治されるべきだと信じています。だから貴方に、鬼退治を依頼したのです」
驚きはなかった。ひょっとしたらそうだったのではないか、と予想していたことであったからである。
そもそも、もしも鬼たちが本当に、快楽のみで人を殺すような怪物ならば、神様はあんなことは言わなかっただろう。
『選びなさい、桃太郎。鬼達と一緒に天国に行くか、あるいは一緒に地獄に行くのかを』
彼等も自己防衛のためとはいえ、強盗殺人を行っている。その罪は裁かれなければいけない。だが、彼等を悪として地獄に送り込むというのならば、真実を知らなかったとはいえ彼等を殺して英雄になった桃太郎も地獄に行かなければいけない。
そして自分が天国に行くような善行を成したと思うのならば。生きるためにやむなく人を殺した鬼達も当然、同じように許されるべきである、と。
「……神様」
心は、決まっていた。
「僕は、英雄なんかじゃない。英雄になんてなる資格はなかった。……誰かの要らない世界を肯定して、自分達だけが幸せな世界を作るなんて。そんな存在を、僕は正義だなんて呼びたくはありません」
知らないことは、罪ではない。
けれど、知らなかったことで許されることは何もない。
何より。知るべきであったはずのことを、知ろうともしなかったのなら。それには相応の、罰が下されてしかるべきだろう。
「ですから。僕を地獄に。……鬼達を、天国に送ってもらうことはできませんか」
「それが、貴方の答えですか」
「はい。僕は己の罪を償わずして、己を許すことはできません。正しく神の裁きを受け、何も知らずに彼等を虐殺した罪を償いたいと思います」
例え自己満足だとしても。今更取り返しがつかないことだとしても。
それによって、変わることもあるかもしれないというのなら。
「……わかりました」
神様は頷き、こう告げたのだった。
「貴方に、尤も相応しい罰を下しましょう。貴方が行くべき場所は……」
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