超ショートショート

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超ショートショート

逢瀬 (あの人と一年に一度の逢瀬すら叶わないというのに、なぜ御父様の客人と会わなければいけないの) 「御父様、ご無沙汰してます」 織女はうつうつとした心を押し殺す。父であり天帝の命に背くことは、天の理に背くことでもあるのだから。 「ふむ。相変わらず華が足りんな」 天帝の手招きに女房の一人が応じ、邸の奥で織女は身だしなみを改められ、 「唐紅の蓮飾りの灯籠の元に」 客人が待つ間を告げられ、織女は唇をへの字に歪める。 「そんな顔をしないでくださいませ。私からいえるのは、天帝様も天の理に従わねばならないということ」 女房は頭を下げ織女を送り出した。客人が待つ間はすぐそこ。 「失礼します」 織女の声に振り返る客人に、織女の瞳が大きくなる。 「織女!」 「牽牛郎様!」 頬に厚い胸、回した手に逞しい腰。その感触を確かめるかのように抱擁を交わす。 天帝の邸から、宴の始まりを告げる軽やかな音色が。二人は寄り添い、天帝の邸に向かって頭をさげた。 天の川の上流から、手桶に入ったそうめんと、涼やかな皿に盛られた料理が、小舟に乗って運ばれてくる。 「酌を願えるかい?」 織女は夫に寄りそい、咲き誇る花に負けない笑顔となる。 (超ショートショート お題:そうめん)
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