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廊下拭きを終えて、玄関を開けると、外は薄明るくなっていた。
小鳥がさえずり、郵便配達のバイクのエンジン音が聞こえる。
もう朝か。オールしたのなんて、大学生のとき以来だ。
眠気のピークをすぎてある程度すると、頭がバグるのか、もはや眠たくなくなる。今も眠気はすっかり冷めてしまっていて、掃除する気力はまだ十分にあった。
扉を最大限に開いて固定して、男の靴を靴箱に仮置きすると、ほうきで掃いていく。砂や埃が宙に舞う。
空は一度色が薄くなると、明るくなるのは一瞬だ。あっという間に薄紫色から白をたっぷり含んだ水色に変わり、共用廊下には朝の光が差し込んでくる。
光は玄関を、砂埃を、おれを照らす。
まるで長い夜の終わりを見せつけてくれているみたいだった。
おれは自然と目を細めた。
おわり
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