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森の中へと足を踏み入れ、人一人分しか通れない細い道を4人で列になって歩いた。俺たちは虫除けスプレーを菊池の家へと置いたままだったが、藤原さんが持っていて貸してもらうことが出来た。
「もうすぐ着くよ。」
先頭を歩いていた藤原さんが後ろを向いて相変わらずの元気な声で言った。
「やっとかよ……拷問かと思った。」
俺の後ろを歩いていた広谷がため息混じりにそう呟いた。奥の方に木のない場所が見えてきて、そこに沢山人が集まっているのも見られた。
「着いたぁー!」
一足先に広場に入った藤原さんが元気に叫び、こちらを向いた。俺たちも広場へと入っていき、その光景に驚いた。村の人々全員が集まっているのではないか、という程の活気が溢れており、皆がそれぞれの仕事があるかのように一生懸命働いていた。各場所での作業はテキパキと進んでいるようにみえる。
「あれ?瀬戸君たちかい?来てたのか。」
柳さんが俺たちを真っ先にみつけてこちらへ歩いてきた。
「なにか手伝えることはありませんか?祭りの準備でもなんでもします。」
「いやいや、これは君たちの歓迎会なのに君たちに準備させるわけにいかんよ。そもそも来てすぐなのに手伝わせるなんてできない。」
「しかし……」
互いに1歩も引かぬ衝突は、藤原さんの加勢によって終わらせられた。俺相手に1歩も引かなかった柳さんも、若い女性には弱いようだ。結局は手伝えることになり、俺たちと女子2人も加わって作業の中へと混ざっていった。広谷は手伝いに加わる最後まで手伝いをしたくないことを暗に俺に伝えていたが、無視をした。いくら体重が重かろうと、歩くので疲れていようと、手伝いはさせなければならない。
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