始まり

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新幹線の中から見る景色は、だんだんと緑が増えていき、同じような眺めを繰り返すようになっていった。初めの方こそトランプなどをして中学生の修学旅行を思い出すかのように楽しんだが、途中から飽きてしまい、広谷はスマホ、菊池はヘッドフォンを着けて曲を聴きながら寝始め、俺は最近読み始めたミステリー小説の読破に励んだ。 電車がまもなく到着することを告げ、広谷が菊池を起こして全員が準備をした。盛岡駅は賑わっており、東京ほどではないが人は多かった。駐車場のところで菊池の母親らしき人物が待っており、菊池が手を振ると、笑って手を振り返した。 「久しぶりね、崇裕。そちらの2人がお友達の?」 「瀬戸瑞稀(せとみずき)です、今日からよろしくお願いします。」 「広谷貞利です、よろしくお願いします。」 菊池の母親が言い終わるや挨拶をして頭を下げた。広谷も続いて挨拶をする。彼は柔道と柔術を主軸において総合格闘技もやっていて、試合中や何かに集中している時はすごく険悪そうな顔をするが、普通に話している(特に、知らない他人との)ときはとても明るく、謙虚で朗らかである。 「どうも、菊池隆子です。そんなに緊張しなくてもいいのよ。なんにもない村だけど、楽しんでいってね。」 そういって笑う顔は、どことなく菊池に似ていた。
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