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車に乗って移動するのかと思いきや、また電車へ乗ることとなり、そこからの道のりもまた長かった。電車内では、菊池のお母さんとも世間話をして案外盛り上がった。
「そういえば、瀬戸君も広谷君も。どうしてここに来ようと思ったの?あなたたちみたいな年齢の子が楽しめるようなスポットはあまりないと思うのだけど。」
そう言って微笑する。俺に代わって広谷が説明を始めた。
「まあ東京も楽しいんですけど、見ての通り、何より僕は暑いのが苦手なので。それに菊池から聞いたんですが、菊池の故郷の村には珍しい風習や祭りがあると聞きまして。調べても出てこなかったので2人とも余計興味が湧きました。」
広谷は民俗学者になるのが将来の夢で、民間信仰や妖怪の伝説などに詳しい。
「ああ、オヒオミ祭のことね?毎年この時期にやる祭りなんだけど、確かに調べても出てこないかもね。あまり知名度は高くないから。」
「なるほど…この時期にやるってことは、もしかして僕達も見られたりするんですか?」
「もちろん!」
菊池さんは声を張り上げて肯定した。隣に座っていた広谷と顔を見合せ、歓喜の声を上げた。ちょうどその時、電車が駅に着く旨のアナウンスが流れたので、各自が降りる準備をし始めた。
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