風の匂い

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 薄暗い部屋で、夕飯のハンバーガーを頬張る。特に疲れた日は、こうして自分をダメにする。  明々としたテレビは、見るわけでもなく聞いているわけでもなく、ただ手元を照らす為につけているだけ。寂しさを紛らわせる為の、ささやかな抵抗なのだろうとも思う。  流行りも社会情勢も特に気にならない。近頃は、洗濯のタイミングと次の食事の事くらいでしか悩まないのだから。  仕事は恙無く進み昇進目前。成功している、とでも思われるだろうか。心が徐々に、感情を忘れてゆくことが薄ら淋しい。  二つ目のバーガーを食べようと袋に手を突っ込んだ時、ナゲットの不在に気づいた。くそ、今日一番食べたかったのに。しかし、連絡するのも面倒に思い諦める決意をした。  その時、偶々流れていたニュースが耳に入った。
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