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授業中なのに、思わず声を上げそうになった。
だって驚いたから。
…これってつまり、私に聞いてるんだよね?
先生が一生懸命教えてくれている中、申し訳ない
とは思いつつも、鬼島君を無視することは出来なかったから私もペンでその下に書き出す。
『自分の声が好きじゃないから』
書いてから、自然と顔が更に下を向いてしまった。
すると、すぐに鬼島君がまたペンを動かしたのが
分かる。
何て反応が返ってくるのか少し怖かったけど
私は教科書の端を見つめた。
『可愛い声してんのに。なんで?』
トクンッと胸が鳴る。
私の教科書の端に書かれた"可愛い声"という
男の子らしいぶっきらぼうな文字───。
昨日、同じことを言われた時を思い出してしまった。
…鬼島君は本当に私のこの声を可愛いって思って
くれてるの?
そっと顔を上げて隣を見たら、至近距離でバッチリ
目が合ってしまった。
鬼島君がじっとこちらを見つめている。
その表情には、からかってるそぶりなんてなくて
ましてや馬鹿にした雰囲気ももちろんなくて
とても真面目な顔をしていた。
急に恥ずかしくなった私は、髪を耳にかけながら
またペンを走らせる。
『可愛くないよ。』
『いや、可愛いだろ』
すかさず返ってくる返事。
そのことに驚いていると、私を待たないで鬼島君は
また何か書き始めた。
『せっかくいいもん持ってるのに
もったいない。』
───ぎゅっと胸が締め付けられる。
ペンを握っていた手にも、いつの間にか力が入って
しまっていた。
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